座間9人殺害 白石被告起訴内容認めるも…弁護人は承諾殺人罪主張

2017年10月に神奈川県座間市のアパートで男女9人の切断遺体が見付かった事件で、強盗強制性交殺人罪などに問われた無職・白石隆浩被告(29)の裁判員裁判初公判が30日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれた。白石被告は、9人の殺害や死体遺棄について全面的に認めたが、弁護人は「被告には何らかの精神障害があり、それが認められない場合でも承諾殺人罪にあたる」と主張。被告と弁護人の意見が食い違う形となった。
ツイッターの複数のアカウントを駆使して女性をおびき寄せ、自宅アパートで殺害に及んでいた白石被告は、検察官が読み上げる自らの罪状を証言台の前で人ごとのように聞いていた。
緑色の長袖シャツに同じ色のズボン姿で出廷した白石被告は黒縁メガネにマスク姿。髪は肩まで伸び放題のグシャグシャで、逮捕時に報じられた姿よりもふっくらしており、面影は全くなかった。
罪状認否では「えー、起訴状の通り、間違いありません」とハッキリした口調で起訴内容を認めたが、ややひねったような体勢で首は右に傾けたまま。公判中も椅子にもたれかかって足を広げ、目を閉じたまま腕を組んだり伸びをしたりと終始けだるげな様子だった。
白石被告が罪状をすべて認める一方、弁護人は殺害や死体遺棄などの事実については争わないとした上で「被告は何らかの精神障害にかかっていて、今回の事件を起こしたとみられる。心神喪失、あるいは心神耗弱の疑いがある」と、刑事責任能力に問題があったとして無罪を主張。さらに、それが認められない場合でも「被害者には希死念慮(死にたいと思う気持ち)があった」として承諾殺人罪が適用されるとした。
弁護人は「被害者は全員、自らの意思で被告人の元へやって来た。おどしたり、誘拐したわけではなく、強制はなかった」と言及。9人はSNSなどで自殺願望を訴え、白石被告と具体的なやりとりをしていたことから、「被告人の手によって(死が)実現されることを想定していた」ことが、通常の殺人とは異なるとの見解を示した。
これに対し検察側は、白石被告が1人目の女性を殺害後、「この方法なら働かずに金を手に入れられ、性欲も満たせると考え、自殺願望のある女性をだまして誘い込むようになった」と指摘。「一貫して目的にかなった行動をしており、いきなり首を絞める犯行に及んでいることからも、単なる殺人行為を繰り返していただけ」とし、刑事責任能力があり、承諾殺人にも当たらないとした。
◆承諾殺人罪 被害者の同意を得て、その人を殺害した場合に適用される。依頼を受けて殺害する嘱託殺人や自殺を唆す自殺教唆罪、自殺を手助けする自殺ほう助罪と同じく刑法202条で規定している。法定刑は6月以上7年以下の懲役または禁錮となり、殺人罪の上限の死刑に比べ軽い。白石隆浩被告が起訴された強盗強制性交殺人罪が認められると法定刑は死刑か無期懲役となるが、被害者全員について承諾殺人罪が認められた場合、併合罪の規定を適用しても刑の上限は懲役10年6月となる。
◆座間9人殺害事件 2017年10月、行方不明の女性を捜索していた警視庁の捜査員が、神奈川県座間市のアパート一室で、クーラーボックスなどに入った9人の切断遺体を発見した。警視庁は殺人容疑などで住人の白石被告を計10回逮捕。東京地検立川支部は18年9月、強盗強制性交殺人と強盗殺人、死体遺棄・損壊の罪で起訴した。被害者は、自殺願望を書き込んだツイッターなどを通じて被告と知り合った当時15~26歳の女性8人、男性1人。