駐輪場に放置されている盗難自転車を持ち去ったとして、占有離脱物横領の罪に問われた男性の判決で、福岡地裁(溝国禎久裁判官)は9月28日、無罪(求刑懲役10月)を言い渡したと報じられた。 報道によれば、男性は、住んでいた団地の駐輪場で無施錠の自転車を見つけ、コンビニやスーパーへ行く際に複数回にわたり無断で使用していたという。盗難自転車だとは知らず、警察官に職務質問されて初めて認識したという。 判決は、男性の自転車使用が1回数時間程度で、駐輪場に戻していることなどの事実に着目。「自らの物にしようとする意思があったとはいえず、『一時的な無断借用』の域を超えない」とし、占有離脱物横領罪の成立に必要な「不法領得の意思」が認められないと判断したようだ。 なお、職務質問を受けた日は約12時間使用していたが、それについても「借用の域を超えていない」と判断したという。 他人の自転車を無断で使用しても無罪になるというのは、法的にどういうことなのだろうか。清水俊弁護士に聞いた。 ●窃盗罪と占有離脱物横領罪の違いは「占有の有無」 ーーネットでは、「これは窃盗では?」という声もありました 「窃盗罪と占有離脱物横領罪は、どちらも他人の財物を侵害する財産犯と言う意味では同じですが、他人が占有している財物を奪うのが窃盗罪、占有を離れた財物を自分の物にするのが占有離脱物横領罪です。要するに、他人が占有しているかどうかに違いがあります。 本件では、無断使用した自転車が、客観的に見れば盗難自転車で、所有者や乗り捨てたであろう犯人などの占有を離れた『占有離脱物』であったため、窃盗罪ではなく占有離脱物横領罪が問われたわけです」 ーー占有離脱物横領罪の成立に必要な「不法領得の意思」とはどのようなものですか 「不法領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思を言います。 『権利者排除意思』と『利用処分意思』で構成され、前者は一時使用(いわゆる使用窃盗など)を処罰しないため、後者は器物損壊罪と区別するための機能を果たします。 本件では、無断使用が『権利者排除意思』がなく犯罪にはならない一時的な使用として無罪なのか、それとも『権利者排除意思』を持って領得し占有離脱物横領罪が成立するのかが問題となりました」 ●裁判所は「権利者排除意思」がないと判断 ーー今回の判決では無罪となりました
駐輪場に放置されている盗難自転車を持ち去ったとして、占有離脱物横領の罪に問われた男性の判決で、福岡地裁(溝国禎久裁判官)は9月28日、無罪(求刑懲役10月)を言い渡したと報じられた。
報道によれば、男性は、住んでいた団地の駐輪場で無施錠の自転車を見つけ、コンビニやスーパーへ行く際に複数回にわたり無断で使用していたという。盗難自転車だとは知らず、警察官に職務質問されて初めて認識したという。
判決は、男性の自転車使用が1回数時間程度で、駐輪場に戻していることなどの事実に着目。「自らの物にしようとする意思があったとはいえず、『一時的な無断借用』の域を超えない」とし、占有離脱物横領罪の成立に必要な「不法領得の意思」が認められないと判断したようだ。
なお、職務質問を受けた日は約12時間使用していたが、それについても「借用の域を超えていない」と判断したという。
他人の自転車を無断で使用しても無罪になるというのは、法的にどういうことなのだろうか。清水俊弁護士に聞いた。
ーーネットでは、「これは窃盗では?」という声もありました
「窃盗罪と占有離脱物横領罪は、どちらも他人の財物を侵害する財産犯と言う意味では同じですが、他人が占有している財物を奪うのが窃盗罪、占有を離れた財物を自分の物にするのが占有離脱物横領罪です。要するに、他人が占有しているかどうかに違いがあります。
本件では、無断使用した自転車が、客観的に見れば盗難自転車で、所有者や乗り捨てたであろう犯人などの占有を離れた『占有離脱物』であったため、窃盗罪ではなく占有離脱物横領罪が問われたわけです」
ーー占有離脱物横領罪の成立に必要な「不法領得の意思」とはどのようなものですか
「不法領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思を言います。
『権利者排除意思』と『利用処分意思』で構成され、前者は一時使用(いわゆる使用窃盗など)を処罰しないため、後者は器物損壊罪と区別するための機能を果たします。
本件では、無断使用が『権利者排除意思』がなく犯罪にはならない一時的な使用として無罪なのか、それとも『権利者排除意思』を持って領得し占有離脱物横領罪が成立するのかが問題となりました」
ーー今回の判決では無罪となりました