教員による児童生徒へのわいせつ行為が後を絶たない。被害を早期に発見し、不適格な教員を排除する仕組みを整えなければならない。
わいせつ行為やセクハラで懲戒処分を受けた公立小中高校などの教員は、2019年度までの5年間で1030人に上る。読売新聞の調査で明らかになったもので、このうち半数近くは、教え子や卒業生を対象にしていた。
教師は児童生徒を教え導く立場にある。上下関係を悪用した卑劣な行為は断じて許されない。信頼を裏切られた子供の心には、生涯にわたって消えない傷が残る。
羞恥心や恐怖心から被害を訴えられない子や、成長してから苦しむ人もいるという。表面化していない被害が多いのではないか。
まずは実態を把握することが不可欠だ。小中高校の児童生徒を対象に、セクハラ被害のアンケートを定期的に実施している教育委員会もある。相談窓口を設置するなど、被害者が声を上げやすくする環境を作ることが大切だ。
文部科学省の要請で、各都道府県・政令市教委はわいせつ行為をした教員を原則、懲戒免職とするようになった。免職になると、教員免許は失効する。ただ、現行法では3年たてば再取得できる。
職業選択の自由や更生の可能性への配慮だろうが、過去には、性犯罪で摘発された教員が他の地域で採用され、再び同様の事件を起こした事例が複数あった。こうしたケースを防がねばならない。
文科省は、免許再取得の厳格化へ向けた法改正も含め、抜本的な対策を講じてもらいたい。
保護者らで作る団体は、わいせつ行為で懲戒免職となった教員に免許を再交付しないよう求める陳情書を文科省に提出した。そうした教員に二度と教壇に立ってほしくないというのは、多くの保護者に共通の思いだろう。
文科省は来年、教委が教員の処分歴を検索できるシステムの閲覧期間を、現行の3年から40年に延ばすという。しかし、検索では処分理由までは分からない。再発を防ぐには、各教委間で、わいせつ教員の情報を共有すべきだ。
教員がひそかに子供と連絡を取れるSNSの存在が、被害を助長している面もある。SNSでの児童生徒との私的なやり取りを禁じている教委は多い。教員への指導を改めて徹底してほしい。
大半の教員は、真剣に子供たちと向き合っている。一部の問題教員のために、全体への信頼が揺らぐことがあってはならない。