日本で難民申請中の外国人2人が精神疾患などを訴えたのに入管施設に長期にわたり繰り返し収容した入管当局の対応について、国連人権理事会の「恣意(しい)的拘禁作業部会」は、「恣意的な拘禁などを禁じる国際法に違反する」との見解を示した。外国人らを支援する弁護士グループが5日、東京都内で記者会見し明らかにした。同グループによると、国内の難民への対応を巡り、こうした判断は初めて。同部会は入管法を国際人権基準に沿って見直すことや当事者への賠償なども求めており、日本政府の対応が注目される。【和田浩明/統合デジタル取材センター】
「恣意的で法的根拠欠く」日本政府に是正と調査、法律見直し求める
国連の恣意的拘禁作業部会は、世界人権宣言など国際的な人権基準に反する恣意的拘禁の事例を調査している。メンバーは5人で、オーストラリア、ラトビア、メキシコ、韓国、ベナンから任命された人権専門家らだ。
今回、同部会が判断を示したのは、在日約13年で日本人女性と結婚しているトルコ国籍のクルド人男性デニズさん(41)と、在日約30年でイラン国籍の男性サファリ・ディマン・ヘイダーさん(51)。いずれも複数回の難民申請をしており、今も申請中だ。
在留資格を失って国外退去処分も受け、デニズさんは合計約5年、ヘイダーさんは約4年6カ月、入管施設に収容された。2019年夏以降、2人とも複数回、2週間の仮放免後に再収容され、現在は仮放免中。
参院議員会館で会見したデニズさんらを支援する弁護士チームによると、2人は自らに対する日本の入管当局による処遇について19年10月に作業部会に通報。同部会は日本政府の意見も聞いたうえで見解をまとめ、今年10月1日に通知してきたという。
作業部会は日本の入管当局による2人の長期収容などの「自由の剥奪」について、日本も受け入れている世界人権宣言などが定める▽差別の禁止▽生命・自由・身体の安全の権利▽基本的権利侵害の司法による救済▽恣意的拘禁の禁止――に違反していると明確に指摘。恣意的なもので法的根拠を欠いており、差別にあたると指摘した。
そのうえで、日本政府に対して、2人の状況の遅滞ない是正▽国際法にのっとった補償▽完全かつ独立した調査と責任者に対する措置▽国際基準に沿った出入国管理及び難民認定法の見直し――などを要請。今後の対応について情報提供するよう求めている。
「外国人の刑務所。日本は我々を人間として扱って」
デニズさんは、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)収容中に職員から暴行を受けたとして、国家賠償訴訟を起こしている。同センターについて「外国人の刑務所だ」と批判。長期収容に伴う精神的重圧で自らは自殺未遂を繰り返し、他の収容者が亡くなったこともあると述べ、「日本は違反をやめ、我々を人間として扱ってほしい」などと訴えた。
長期収容に抗議して抗議のために絶食するハンガーストライキ(ハンスト)を行ったこともあるヘイダーさんは、収容中の体験について「51年生きてきて、あれほど惨めだったことはない。収容者は犯罪者でなく理由があって(母国に)帰れない。日本で平凡に暮らしたい」と流暢(りゅうちょう)な日本語で語った。
また、2人は今も入管施設に収容中の他の外国人について「日本に家族を持つ人もいる。愛する人と一緒になれるように解放してほしい」などと話した。
政府は入管法改正目指すが、「自由が保障されるべきだというのが国際的な基準」
昨年6月に長崎県大村市の大村入国管理センターで長期収容中のナイジェリア人男性が「飢餓死」した事件を受け、法務省・出入国在留管理庁の有識者会議「収容・送還に関する専門部会」は今年6月に提言を取りまとめた。法務省はこの提言に基づき入管法改正を目指す。
しかし、デニズさんらの通報を支援した弁護士チームの浦城知子弁護士は会見で、「提言は収容期間の上限設定や収容に関する司法審査を見送っており、いずれも国際法違反とする国連作業部会の見解に反している」などと批判した。
小川隆太郎弁護士は「人身の自由に関する考え方が海外と国内では全く違う。在留資格に関わらず自由が保障されるべきだというのが国際的な基準だ」と指摘した。
記者会見には「難民問題に関する議員懇談会」の会長を務める石橋通宏参院議員(立憲民主)や石川大我参院議員(同)、福島瑞穂参院議員(社民)も出席した。国連作業部会の指摘について石橋氏は「国際法違反との明確な指摘を深刻に受け止め、入管法を国際条約や今回の見解にのっとって改正しなければいけない。懇談会で、(難民申請中の外国人を)原則収容しない対応を盛り込んだ改正案を準備する」と述べた。