居住地や就業状況などを尋ねる5年に1度の「国勢調査」。1920年の開始以来、今年で100年の節目を迎えるが、汗を流しているのは調査員ばかりでなく、詐欺師も同様のようだ。
「国勢調査の者です。保険証番号と口座番号を教えてください」
そんな電話が大阪府の80代女性にあったのは、9月20日午前中。女性は不審に思って「よく分かりません」と電話を切り、カネを騙し取られることも情報を聞き出されることもなかったが、同じような被害は島根県や千葉県など全国で多発しており、自治体が注意を呼びかけている。
社会部記者の解説。
「総務省はインターネットでの回答を勧めていますが、高齢者にはハードルが高い。国勢調査員を装う手口には幾つかのバリエーションがあり、電話で情報を聞き出すだけでなく、調査員になりすまして直接訪問するケースもあります」
消費者庁も危機感を募らせており、「銀行口座や年収、マイナンバーを調査員が聞き出すことはありません」などとするパンフレットを配布。注意喚起に躍起になっているが、被害の収まる兆しはない。
「消費者庁が早々に注意喚起を始めたのには訳があります。前回国勢調査が行われた5年前にも、調査員を装った男による強盗事件などが起きているんです。現に消費者庁はまだ聞き出された情報を具体的に悪用された報告がない段階で『公的機関を装い、資産情報を聞き出す“アポ電”の可能性もある』と異例の言及もしています」(同前)
コロナが詐欺師たちの追い風に……
新型コロナウイルスの感染拡大も、詐欺師たちには追い風になっている。自宅で巣籠りする高齢者が増えたことで、詐欺の電話をかけても留守で空振りする回数が減るからだ。
「アポ電で終わるのではなく、偽調査で得られたいわばウラの国勢調査結果が、振り込め詐欺に使われる可能性も高い」(捜査関係者)
実際、ある暴力団関係者はこう話す。
「詐欺に欠かせない道具の中に『騙すための会話マニュアル』と『電話番号のリスト』があるが、リストは単に電話帳から個人の番号を抜き出したものから、高額の布団を買った顧客の情報が並ぶ“カモリスト”までピンキリ。しかし、偽の国勢調査員の調査にホイホイ応じ、マイナンバーから口座番号まであるリストとなれば、騙される確率も高くなるし、かなり高額で売れるはず。もちろん、偽調査のマニュアルもすでに出回っているだろう」
国勢調査の回答期限はネット、郵送ともに10月7日だったが、武田良太総務相も低調な回答率に懸念を示す。このままでは、ウラの国勢調査結果の方が充実した内容、ということにもなりかねない。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年10月8日号)