台風19号上陸から1年…多摩川氾濫被害の二子玉川のいま

切れ目無く設置された土のうを見つめ、「去年みたいな悲惨なことに、今年はならないことを祈るだけです」―。そう語ったのは、東急田園都市線・二子玉川駅(東京・世田谷区)周辺に住んで約12年の60代男性だ。
2019年10月12日に上陸し、日本各地に甚大な被害をもたらした台風19号により、二子玉川駅近くでも多摩川が氾濫し、堤防が未設置だった一部エリアが浸水した。浸水被害などから一夜明けた13日、現場に足を運ぶと、周辺商業施設は午前中を休業にし閑散とする一方で、河川敷では、増水し唸(うな)るような音を立て濁流と化した多摩川を見に、多くの人が集まっていた。
当時、堤防が設置されていなかった二子橋から上流に進んだエリアでは、台風一過の空の下、近隣住民が汗をぬぐいながら、長靴とジャージ姿で泥をかく姿が見られた。「閑静な住宅街」といったイメージに似つかわしくない光景が広がっていた。住民や視察に訪れた都議からは「今まで景観を重要視する声もあったが、堤防を急ぐべき」との声が聞かれた。
あれから約1年、同地区は、今年度内の完成をめどに堤防建設の計画が進んでいる。1年前は土のうの隙間から濁流が流れ込んだが、現在は堤防整備までの暫定的な対策として、高さ約1・3メートルほどの土のうが、数メートルにわたり切れ目無く積まれている。電柱には「想定浸水深5・0メートル」の表示が目立つ。
周辺に住む70代男性は、「異常気象っていうけど、もはや異常でもなんでもない。大雨や大型台風はいつ何時に来てもおかしくないと去年の被害で実感した」と話し、「今年はコロナの問題もあって、もし避難するとなれば避難先での感染も心配」と不安を漏らす。
現在、台風14号が近づき、週末には関東にも接近すると伝えられている。堤防や調整池の整備などの災害対策だけでなく、ハザードマップなどでの浸水警戒地域の再確認や、避難先での感染症対策強化が急務となっている。(記者コラム・奥津 友希乃)