蓮池薫さん「北は日本の意志を見ている」 15日で帰国18年

北朝鮮による日本人拉致被害者の蓮池薫(はすいけ・かおる)さん(63)が、平成14年10月15日に帰国を果たして18年となるのを前に産経新聞のリモート取材に応じ、「日本政府、国民の拉致解決への意志を北朝鮮は見ている。今が最も大事な時期だ」と訴えた。蓮池さんら被害者5人の帰国後、日朝交渉は膠着(こうちゃく)。未帰国被害者の家族が高齢化し、相次いで亡くなる中、政府に具体的で柔軟な帰国への戦略を求め、解決に向けた世論の高まりにも期待を示した。
自分にできることを
蓮池さんは中央大法学部に在籍していた昭和53年7月、帰省した新潟県柏崎市の海岸で、後に結婚する妻、祐木子さん(64)とともに拉致された。当時、20歳と22歳。そこから24年間、北朝鮮での生活を余儀なくされた。当時の記憶は今も鮮明で、北朝鮮に残る被害者のことは片時も頭から離れないという。
同市の新潟産業大で准教授として教鞭(きょうべん)をとるかたわら、各地で拉致解決を呼びかける講演にも力を入れてきた。「被害者は一日千秋の思いで帰国を待っている」。だが今年、新型コロナウイルスの感染拡大で活動は大きく制限された。
講演や報道の取材を通して積極的に発信を始めたのも、家族が老い、思うように救出運動ができなくなった現状を見て、「家族が元気なうちに被害者と再会させたい」との一念からだった。
だが、北朝鮮の同じ集落で生活した横田めぐみさん(56)=拉致当時(13)=の父、滋さんは今年6月、87歳で死去。一刻の猶予もない現実をさらに痛感させられたという。
北窮状「サイン注視を」
厳しい状況だが、拉致解決に向けて「好機が来ている」とみている。
国連安保理による経済制裁に加え、新型コロナによる中朝国境の封鎖、相次ぐ台風による大規模水害などで北朝鮮は“三重苦”状態にあるとされる。今年8月には、2016年の朝鮮労働党大会で示した「5カ年計画」の目標未達成を認めた。5カ年計画の未達成は史上初の異例の事態だ。
蓮池さんは「自力更生は無理だとの結論だ。支援を期待し、拉致問題を含む外交戦略を見直す可能性がある。『日本』『拉致問題』という外交カードを、しっかり意識させられるかが大事になってくる」と語る。
拉致被害者家族会は、被害者全員の即時一括帰国を「譲れない一線」としており、蓮池さんも「日本政府も、その基本方針を維持するのは当然」と強調する。
また、米朝間で焦点となっている北朝鮮の核・ミサイル問題が進展すれば、拉致問題の進展も期待できるとみるが、「日本は具体的戦略を立て、柔軟に対応しなければならない。拉致を先に解決できる局面がないか、北朝鮮の動向、サインを見逃さないようにするべきだ」と指摘する。
決して「忘れない」
平成9年、日本では被害者家族会が結成された。日本の新聞の翻訳などを命じられていた蓮池さんも救出運動を報じる記事を目にしていた。「自分は忘れられていないと感じ、うれしかった」と振り返る。
家族会は滋さんの息子の拓也さん(52)ら若い世代が活動の中心になりつつある。蓮池さんは「北朝鮮は『まだ救出運動を続けるのか』と重圧を感じる。世論も盛り上がれば『もうごまかしきれない』と思い知るだろう。その動きはきっと北朝鮮にいる被害者にも伝わるはず」と話す。
9月に発足した菅義偉政権は、安倍晋三前首相が掲げた拉致解決を最重要、最優先課題とする方針を継承した。蓮池さんは「政府は家族の目に見え、希望を持たせる形で取り組みを進めてほしい。同時に国民が、同じ思いを持って行動を続けることが必要だ」と述べ、拉致解決へ日本が一体となって取り組むことを期待した。