東京都足立区が生活保護を受給する30代男性に対し、支給決定後4日で打ち切っていたことが生活保護の利用を支援する団体などの話で判明した。区は一時的に男性が滞在していたビジネスホテルで「男性と連絡が取れなくなった」と打ち切りの理由を説明する。一方、支援団体は「本人に直接連絡を取ろうともせず、4日で打ち切るのは前代未聞だ」と打ち切りの撤回を求めている。【南茂芽育】
男性は新型コロナウイルスの影響で仕事を失い、野宿をしながら物流センターで荷出しなどの仕事をしていた。野宿状態を心配した勤務先の上司が支援団体に連絡、団体メンバーらが生活保護の申請に付き添い、先月末にビジネスホテルに仮入居。今月8日に生活保護の支給が決定した。
区によると、区は支給の手続きのため男性と連絡を取ろうと同8日にホテルを通じ、男性に区に連絡をするよう求めたが、12日まで連絡はなく、打ち切りを決めた。区は「ホテルから『男性は戻ってきていないし置き手紙もそのまま』と聞いた。本当にそこにいたのか疑問だ」と説明。直接確認した様子はうかがわれない。
ホテルによると、男性には9日夜に区に連絡するよう書かれたメモを手渡したという。支援団体によると、男性はホテルに宿泊しており、12日に打ち切り決定を聞いて困惑した様子だったという。
生活保護法26条では、生活保護の廃止は「被保護者が保護を必要としなくなったとき」と定めている。区は「生活保護申請が重複して行われる可能性もあり、そこに住んでいないと思われれば、生活保護は必要ないと判断して廃止した」と説明する。しかし、支援団体の関係者は「直接確認もせず、4日間で打ち切るなどまともな対応ではない」と批判する。コロナ禍の下での生活保護の利用支援に取り組んできた「反貧困ネットワーク」の瀬戸大作事務局長は「確認が取れないならまずは『どこにいるのか』と心配するべきだろう。廃止ありきの対応だと思う」と話している。
厚生労働省の担当者は、「4日という短期間で受給廃止は聞いたことがない。個別の案件にはコメントできないが、廃止を決める前に本人に連絡を取る努力をする必要はある」と話している。