今年夏から秋にかけ北関東を中心に家畜や果物が相次いで盗まれた事件で、群馬県太田市に住むベトナム人のグループが関与した疑いがあることが分かった。群馬県警は入管難民法違反の容疑で中心メンバーとみられる男2人と、その場にいた男女11人を逮捕した。盗んだ肉や果物を販売していたとみて全容解明を急ぐが、事件は「氷山の一角」との指摘もある。
逮捕されたのは、いずれもベトナム国籍の自称カラオケ店経営、レ・ティ・トゥアン(39)、無職のヴー・ホアイ・ナム(35)の2容疑者ら20代から30代の計13人。うち数人が窃盗に関与したとみられる。
同市内の貸家2棟の家宅捜索では頭を落とした状態の冷凍鶏肉約30羽分が床下の冷凍庫などから見つかったほか、モデルガンや金属バット、模造刀が押収された。
SNSでは豚肉や果物を売ると宣伝するベトナム語の投稿があり、その後削除されたが、画像分析などからベトナム人グループの関与が浮上。8月中旬に伊勢崎市のベトナム料理店に出入りしていた軽乗用車に男女2人が乗り、宅配便の荷物などを扱う県内の配送センターに肉や果実の入った段ボールを持ち込む様子が確認された。
配送センターには、ベトナム人グループが果物や肉を複数回送った記録が残っていたほか、埼玉県北部のナシ畑を夜間に徘徊(はいかい)する行動も判明した。
家畜の盗難被害は、今年に入り群馬、埼玉、栃木、茨城の4県で計22件発生。犯行はいずれも夜間帯で、一晩で約100頭の豚が盗まれたケースもあった。被害総額は3000万円超に上る。
ほかにもナシ約1万500個、モモ約3700個、柿約1100個などの果物も盗難の被害に遭った。
元千葉県警刑事課長の田野重徳氏は、「今回の逮捕は間違いなく氷山の一角だろう。これまで振り込め詐欺などに関与してきた犯罪組織が、防犯意識の高まりを受けて盗品をSNSで販売する犯罪にも手を出したという見立てができる。だとすれば、今回逮捕されたベトナム人らは末端の構成員で、背後には組織を統括する日本人がいる可能性が高い」との見解を示した。