ゴミ収集車内で相次ぐリチウムイオン電池の発火、コロナの影響と言われる理由とは

ごみとして出されたリチウムイオン電池が、ごみ収集車内で発火する事故が相次いでいる。減少傾向だった全国の収集車の火災は2018年度、増加に転じた。福岡市では19年度に60件と2年間で倍増し、20年度も新型コロナウイルス感染拡大期の外出自粛に伴って家庭ごみが増えるなか、前年度を上回るペースとなっている。その背景にはリチウムイオン電池の普及があり、関係団体は捨て方を紹介する動画の公開を始めた。(江口武志)

環境省の調査では、全国の収集車の火災は18年度に517件発生し、前年度に比べて10・5%増えた。従来目立っていたスプレー缶が原因の火災は減る一方で、スマートフォンやデジタルカメラなどに使用されるリチウムイオン電池の発火が増加しているという。
電池は収集車で圧縮されると、燃えやすい電解液がガス化して噴出し、発火、破裂することがある。福岡市では19年度に収集車の火災がスプレー缶によるものも含めて60件起き、17年度の28件の2倍余りに増加。20年度も4~8月だけで29件となっている。

リチウムイオン電池からの発火・発煙事故は収集車内に限らず起きており、独立行政法人「製品評価技術基盤機構」(NITE、東京)によると、18年度は全国で209件と15年度の96件の2・2倍になった。担当者は「電動工具、加熱式たばこなど、多種多様な製品に使われるようになり、事故が増えている」とみる。「ごみ収集車の火災が、作業員の人的被害や付近住宅への延焼につながる恐れもある」と警鐘を鳴らす。
今年は新型コロナの影響で事故の恐れが高まっていると指摘する声もある。
福岡市の場合、緊急事態宣言が出されていた5月、家庭の不燃ごみの収集量が前年同月に比べて38・3%、粗大ごみは19・1%増えた。市環境局は「コロナで外出を控えた市民が自宅で片付けをしたことも影響した」と推測。リチウムイオン電池やスプレー缶も捨てられた可能性があり、足立

泰尚
( やすまさ ) ・市収集管理課長は「出前講座やホームページなども通じて、適正な分別方法を呼びかけ続けたい」と語る。
名古屋市は5月の不燃ごみの量が前年同月より67%増えるなどし、5月までの3か月間にリチウムイオン電池などを原因とする収集車の火災が6件発生した。兵庫県明石市では資源ごみを回収した5月13日、収集車からの火災が3件相次いだ。市内での同様の火災は19年度までの5年間で3件だったという。