「最下位おかしい」魅力度ランキングで栃木県 11月知事選の争点に

今年の「都道府県魅力度ランキング」で初めて最下位に転落した栃木県。29日には、5選を目指す現職の福田富一(とみかず)知事(67)と、新人で元NHK宇都宮放送局長の田野辺隆男氏(60)の一騎打ちになるとみられる知事選の告示(投開票は11月15日)が控えており、県の魅力の発信力が新たな争点に浮上している。
「順位を聞いたとき、思わず『えっ』という大きな声が出た」。14日に魅力度ランキングが発表されたことを受け、急きょ報道陣の取材に応じた福田知事は驚きを隠さなかった。
ランキングは、民間調査会社「ブランド総合研究所」(東京都港区)が年1回発表している。2019年までは隣県の茨城県が7年連続最下位。一方で栃木県も16年以降、43~46位と不本意な結果が続いていた。
現職知事は結果に抗議「誇りや愛着そがれる」
「県民の誇りや古里への愛着がそがれる」。初の最下位に福田知事の行動は素早かった。21日に公務として同社に出向き、「納得がいかない。魅力を測る指標として適正か疑問で、調査方法を改善すべきだ」と抗議した。これに対し、同社の田中章雄社長は「回答者に偏りが出ないように、できるだけ公平な調査を実施している」と話す。
こうした知事の行動に、県には23日までに約60件の電話があった。「県のトップが民間企業に抗議に行くべきではない」「よく行ってくれた。すっきりした」などと評価は半々。「なぜ最下位か分からない」と同情の声も寄せられた。
福田知事は「多くの県民から『どうして?』と尋ねられた。知事として県民の声に応えるため調査会社を訪ねた」と説明。知事選への影響については「争点にしたい人もいるだろうが、結果は既に出てしまっている。ここからがスタートなので、魅力度アップは私に任せてほしい」と訴えた。
対抗馬は現職を批判「最下位になるはずがない」
一方、知事選で対抗馬となる見通しの田野辺氏は今回の結果をやり玉に挙げる。「魅力あふれる栃木が最下位になるはずがなく、県の発信力に課題がある。調査会社に文句を言っても仕方がない」と福田知事を批判。街頭演説でも「納豆にイチゴが負けてどうする。霞ケ浦に中禅寺湖が負けるもんか。鹿島神宮より東照宮の方がきらびやかだ」と前年最下位の茨城を引き合いにして、栃木の魅力をアピールする。
田野辺氏は「ランキングへの関心は高い。演説で話すと大いに受ける」と話す。「私が知事になれば、(NHKの)テレビディレクター時代の経験を生かし、面白いキャッチコピーを作り順位を上昇させてみせる」と意欲を見せる。
栃木の魅力を支える各業界の反応もさまざまだ。
ギョーザも日光もイチゴもあるのに
ギョーザの街として知られる宇都宮市。市内の人気店でつくる「宇都宮餃子(ギョーザ)会」の鈴木章弘事務局長(48)は「観光客は『日光東照宮に行こう』『宇都宮でギョーザを食べよう』と、ピンポイントで栃木に来る。それぞれに知名度の高い名物が栃木全体のイメージアップにつながっていない」と分析。発信方法として「逆転の発想で『最下位栃木』を面白おかしくアピールしていってはどうか」と提案する。
栃木はイチゴの収穫量が52年連続全国1位でもある。同県鹿沼市のイチゴ農家、中田真一さん(72)は「知事は選挙前で強気に出ないといけなかったのだろうが、信用性に疑問があるのなら調査に目くじらをたてなくてもいいのでは」と首をかしげる。
インターネット上では、「栃木県を日光県に改名すれば、上位に入れるのでは」との投稿も。同県日光市の世界遺産「2社1寺」を構成する日光山輪王寺の今井昌英執事長(63)は「今は紅葉シーズン真っ盛りで、観光客はたくさん来られている。最下位は意外だが、日光ブランドも届かなかった結果を真摯(しんし)に受け止める」としつつ、「県民全員が一丸となって盛り返していかなければ」と話している。【竹田直人、李舜】