「日本は核廃絶の先頭に」「東アジア非核構想を」被爆者5団体が長崎で会見

核兵器禁止条約の批准国・地域が発効に必要な50に達したことを受け、長崎市の被爆者5団体は27日、長崎市役所で記者会見を開き、「政府に対し、唯一の戦争被爆国として誠実に核兵器廃絶の先頭に立つことを求める」とする声明文を発表した。一方、佐世保市の朝長則男市長は「理想論と現実論は(区別して)考えないといけない」と述べ、条約に署名・批准しない日本政府の立場を支持する考えを示した。
県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長(80)が声明文を読み上げた。声明は「(条約発効により)核兵器廃絶に向けた国際世論は大きな圧力となり、究極的にゼロになるだろう。その先頭に立つのが日本の役目だ」と指摘し、「(日本は)米国の傘を出て北東アジア非核兵器地帯構想に着手すべきだ」と訴えている。
会見では政府への批判が相次いだ。県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長(77)は「条約を推進する国から日本に疑念のまなざしが向けられている。核保有国と非核保有国の橋渡しをどうするのか、まったく説明がない」と指摘。県被爆者手帳友愛会の永田直人会長(88)は「日本は米国の傘が破れるのを恐れて自由な判断ができない国になっている。政府は実効性のある条約にするために粘り強い努力をすべきだ」と訴えた。
長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(80)は「人類が核によって滅亡するか、核のない青空を未来に残せるかの分岐点に立っている」と強調した。
また、長崎市議会は27日、各派代表者会議を開き、核兵器禁止条約への署名・批准を求める意見書を政府に提出することを決めた。条約発効後の締約国会議にオブザーバーとして参加することや、長崎市で同会議を開くことなども求める方針。
一方、朝長市長は27日の記者会見で「核廃絶は望むが、核保有国が核兵器を廃棄する状況にあるかを見極めることが必要。抑止力の観点からも政府の立場を支持する」と述べた。【松村真友、綿貫洋】