もはやコンシェルジュ付きのタワーマンションですら安全とはいえない時代が来てしまった。警視庁目黒署は、AV女優の里美ゆりあさん(35)の自宅に押し入って現金600万円を奪ったとして、少年強盗団を逮捕した。里美さんの自宅と認識しての犯行だったという。いかにして少年らは里美さんの自宅を割り出し、セキュリティーを突破したのか。
宅配業者になりすました2人組の強盗
宅配業者から段ボールを受け取り、サインをする。そんな日常の風景は一瞬にして命の危険すら感じるやり取りへと変わった。
10月26日午前10時半ごろ、東京都目黒区のタワーマンションのインターホンが鳴った。宅配業者の格好をした男に里美さんは何の疑問も感じず、オートロックを解除。なかに入ってきたのは1人ではなく2人で、強盗だった。
「1億円脱税してたよね?」
少年はそう言いながら部屋に押し入り、逃げようとする里美さんを押さえつけ、ひじやひざにけがをさせたという。
「俺らはとにかく1億円だけ持って帰りたいんだ」
里美さんは2014年、国税局から7年間で2億数千万円の所得の確定申告を行っていないと指摘され、1億円超の追徴課税を課されたことがあり、本人もその経緯を著作として公表している。が、それも過去の話。それでも少年らはクローゼットなどの物色を続け、現金600万円を見つけ、去って行ったという。
「狙おうと思えばいくらでも狙えちゃう。ほんと怖い世の中ですねとしかいいようがない。どうやって自分の身を守ればいいんだろう」
里美さんは、YouTubeでそう振り返った。
幸いというべきか、警視庁は防犯カメラなどから逃走車両を割り出し、約5時間後に神奈川県内で強盗団の少年3人の身柄を確保。翌日、強盗容疑で逮捕した。3人は高校生を含む千葉県の17~19歳の少年だ。ただ、車の中から見つかった現金は400万円で、200万円はどこかにすでに消えていた。
捜査関係者は「グループに抜かれたんだろう」と類推する。最近頻発しつつある強盗はすべて徹底した分業制だからだ。
分業を徹底 振り込め詐欺から「業態転換」
捜査関係者によると、従来の強盗と、ここ数年の強盗の決定的な違いは、強盗団が徹底的に分業制を敷き、運転役、強盗役だけでなく情報収集、現金の運搬など細かく分かれている点だ。奪われた現金は、わずかばかりを実行犯に遺してその他の担当のところに分散されるという。
アポイントの電話を入れて在宅を確認した上で強盗するアポ電強盗などはその典型。こうしたアポ電強盗には振り込め詐欺グループが関わっているという。取り締まりが厳しくなり、手っ取り早い強盗の手口に変え始めたグループがいるのだ。
電話と口座送金でやり取りするヤミ金から派生したとされる振り込め詐欺の更なる変質ともいえる。捜査関係者は「いつかこうなると危惧していたが、それが当たってしまった」と話す。
ただ、アポ電強盗の場合、必ずしも実行犯は被害者の資産までを把握しているわけではない。
今回、思慮分別のなさそうな少年らが、どうやって里美さんの資産情報を仕入れ、自宅の住所どころか部屋番号までを知っていたのか。
電話帳を繰れば誰の住所でもすぐにわかった昭和の時代ならいざ知らず、これだけ個人情報の保護が声高に叫ばれ、小学校の名簿にすら住所や電話番号が載らなくなっているというのに。
「そんなに難しいことではない」というのは、暴力団関係者だ。
リスト屋、弁護士、夜の街…情報の入手先は?
暴力団関係者は「そもそも振り込め詐欺も、いまは闇雲に電話をかけるのではなく、電話番号のリストを使っており、リスト屋から買っている」と明かす。学校の同窓生の電話番号リストは安い方。投資詐欺の被害者、ふとんなどの高額商品の購入者などは「成功」の確率が高く、高額で取引されているという。
そんなリストのなかに里美さんの情報があるとは考えづらい。ただ、この暴力団関係者は「金持ちを見つけて奪う、というのはよくある手口」とも語る。
確かに平成の一時期には資産家の家に押し入り、財産を根こそぎ奪う強盗団などが続出したことがある。こうした資産家情報を提供していたのは暴力団関係者だったともいわれる。
暴力団は、常にこうした情報を収集している。それはクラブやスナックで羽振りのいい客であったり、地元の噂であったり。こうした「夜の街」の情報が「活用」され、振り込め詐欺の拠点を襲う強盗なども行われていた。
「金を持っていればすぐタタキ、強盗をするわけではない。知らない仲でなければ、金を借りてもいい。手っ取り早いのはタタキだけどね」(同前)
銀行窓口などで大量の現金を下ろす資産家を襲うのが、その典型的な手口だろう。行動パターンを割り出すため、徹底的に尾行したり張り込んだりする。
身近な人物に情報を吐かせることも……反社の典型的手口
それだけではない。暴力団に協力してくれる弁護士を使う手口も使われたことがある。弁護士は職務上、正当な理由があれば訴訟の相手方などの住民票を取得することが認められている。それを正当な理由なしに悪用する場合があるのだ。
今回の里美さんの場合はどうか。里美さんは自身のYouTubeで、頻繁にホームパーティーを開いていたことに加え、強盗団の少年が、一般には関係が知られていない里美さんの知り合いの名前を持ち出していたことに言及している。
身近な人物を脅したり掠ったりして情報を吐き出させるのも、反社会的グループの典型的手口のひとつだ。
「来るかね? また?」
YouTubeでそんな不安を口にした里美さんは、引っ越し先の物件探しを始めたという。
(末家 覚三/Webオリジナル(特集班))