任命拒否のおかしさを菅総理が認めた!? 立民・川内議員が引き出した決定的な総理答弁を信号無視話法分析

◆混迷を深める日本学術会議の任命拒否問題

解決の兆しが一向に見えない日本学術会議への人事介入問題。6名が任命拒否された経緯についてこれまで菅義偉総理は、一部の記者のみが参加を許されたグループインタビュー 、回答に対する再質問ができない本会議での代表質問など、突っ込んだ質疑は難しい状況でしか口を開いてこなかった。そうした守られた状況の中ですら、菅総理の主張は二転三転し、もはや支離滅裂と呼ばざるを得ない状況に陥っている。

そうした中で迎えた2020年11月2日の衆議院予算委員会。回答に対する再質問も可能な委員会質疑という状況で、立憲民主党・川内博史議員の質問に対して菅総理の口から大きな進展と呼べる答弁が引き出された。本記事では、その回答がなされた約7分間の質疑を一字一句漏らさずにノーカットで信号機で直感的に視覚化していく。具体的には、信号機のように3色(青はOK、黄は注意、赤はダメ)で直感的に視覚化する。(※なお、色表示は配信先では表示されないため、発言段落の後に( )で表記している。色で確認する場合は本体サイトでご確認ください)

質問に対する菅総理の回答を集計した結果、下記の円グラフのようになった。

<色別集計・結果>

●菅首相:赤信号 黄信号54% 青信号27% 灰色8%

*小数点以下を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはならない

赤信号と黄信号が約6割を占めている。青信号は3割弱にとどまっているが、この中には冒頭で紹介した大変重要な答弁が含まれている。いったいどのような質疑だったのか詳しく見ていきたい。

また、実際の映像は筆者のYoutubeチャンネル「赤黄青で国会ウォッチ」で視聴できる。

◆6人を任命拒否した決裁文書はある?

まず、川内議員は推薦された6人を任命拒否するにあたって、その決裁文書が存在するのかを確認する。菅総理は10月9日のグループインタビュー で「任命前の105人のリストは見ていない」と発言しているため、この話が正しいとすると決裁文書は存在しないはずである。その質疑は以下の通り。

*この質疑の直前にも川内議員は同じ質問をしており、なぜか政府参考人の内閣府・大塚幸寛 官房長が答弁に立ち、質問と全く関係ない話を答弁したため、菅総理に改めて質問したという経緯がある

川内博史議員:「いや、総理ね、あのー、私が聞いたのは『6名の任命をしないよ』と、総理大臣としては『6人の任命をしないということを意志決定した決裁文書がありますか』ということを聞いてるんですね。で、総理は6人の名前は見てないわけですから、見てないとおっしゃっているので、当然、無いはずなんですよ。『無いよ』と『それは無い』とおっしゃるのが総理大臣としての、私が総理の答弁をここで言うのも変な話ですけど、『無い』ということをおっしゃって頂くのがですね、まあ、あのー、大事なことかなという風に思います。」

*菅総理が答弁に立とうとするが、金田勝年委員長はまたしても挙手した政府参考人・大塚官房長を指名。野党議員の猛抗議を受けて、菅総理を指名し直して、ようやく菅総理が答弁を始める。

菅義偉総理:

「私は、あのー、99名について、えー、任命したということです。(赤信号)」

川内博史議員:「いや、だから、6人をですね、『任命しない』と。『俺は、しないんだ』ということを意思決定した文書が存在するのかと。政府として意思決定するのかしないのかって、非常に大事なことなので、あのー、それを聞いてるんです。」

菅義偉総理:「99名を、おー、任命した旨の決裁文書はあります。(赤信号)」

菅総理は2回とも論点をあからさまにすり替えており、赤信号とした。

1回目

【質問】6人を任命拒否した決裁文書

↓ すり替え

【回答】99人の任命

2回目

【質問】6人を任命拒否した決裁文書

↓ すり替え

【回答】99人を任命した決裁文書

これまでと同様、6名を任命拒否したプロセスに関する質問には頑なに答えないという菅総理の姿勢がはっきりとあらわれている。

◆学術会議を改革するのであれば、6人を任命した後にすべき

全く質問に答えない菅総理に対して、川内議員はここから約3分半にわたって、現在の問題点と解決の道筋を整理しながら質問し、冒頭で紹介した菅総理の決定的な答弁を引き出していく。その質疑は以下の通り。

川内博史議員:「この問題を解決できるのは総理しかいないので。これね、あの、突っ張っても違法状態が続くだけなんですよ。なぜなら、なぜなら、総理のところにはね、梶田会長の『6名任命してね、お願いしますよ』という要望書が来ましたよね。これは法的にはたぶん日本学術会議が『6名をもう一回推薦してね』と総理に持ってきてるんですよ。で、総理の手にその6名の推薦名簿があるんですよ、今。で、それを推薦しないとですね、その方たちを推薦しないと210名が会員として揃わないので、総理大臣としての責任を果たしていないってことになるんです。なぜなら210名の会員を組織させるのは総理大臣の責任だから。最終的に。だから、この問題を解決できるのは総理しかいないんです。たった1人なんですよ、この国で。

(中略)

で、あと、学術会議のことがちょっと、『ずっと前から俺は問題に思ってたんだ』と、『改革したいんだ』と。だって改革者だからね。あのー、『改革しなきゃいけないんだ』と仰るのであれば6人を任命した後、正式な会議体をつくって、『議論してね』と。そして『会員の推薦のあり方等を含めてちゃんとしてね』と。これまでと同じやり方をやっていくということが、あー、信頼を受ける、国民に信頼される政治ではないかというふうに思います。そうじゃないとですね、総合的俯瞰的にですね、国民の皆さんからですね、菅内閣は訳わからんと思われちゃうんですよ。

あの、総理ね、総理が1人なんですよ、これ解決できるのは。このまま学術会議が『6名の推薦を取り下げません』と、『あくまでも任命してください』と言い続けたら6名がずっと欠員のままですからね。それは政府としてやってはならないことですから。総理として考えると、梶田会長を呼んで考えると、よく話し合ってみると。もう梶田会長は『6名推薦してね』と来ちゃったんですから、来てるんですから、要望書は出てるんですよ。総理のところに。それは、あー、ちゃんと話すからというぐらいはしないとですね、これずっと続くんです。膠着状態が。それは、このコロナ禍でですね、コロナ禍で他に議論しなければならないこともたくさんあるんですよ。総理として決断してください。」

菅義偉総理:「あのー、理論的には川内委員が言われる通りだという風に思います。(青信号)

で、梶田会長が来られた時にそれは確かに受け取りました。あのー、任命の要望書について。その上で、えー、梶田会長とは『国民から理解をされる会議にしていきたいと』と、『学術会議にしていきたい』と。さらに、そのために何をやるべきかということも一緒にやっていきたいと。まあ、そうしたことについては合意をしまして、いま、井上大臣のところで梶田会長と、おー、会談をして、そうしたことを進めさせて頂いているところであります。(黄信号)

その、任命するしないということは、あのー、そのままの状況になっています。で、結果として、えー、理論的には川内委員の言う通りだという風に私は思っています。(青信号)」

川内議員は「任命拒否された6名を推薦する要望書を日本学術会議が提出した中、現在の違法状態(=定員より6名少ないこと)を解決できるのは菅総理ただ1人しかいない」ということを制度上の事実を踏まえて何度も繰り返し訴えながら、解決の道筋を示していった。そして、日本学術会議の改革を行うのであれば、6人を任命した後に行うべきであるということも指摘している。

これに対して、菅総理は2段落目については周知の事実(梶田会長とのやり取りの経緯)を述べているだけで黄信号としたが、1段落目と3段落目の青信号において、川内議員の提案に対して、「理論的には川内委員の言う通りだ」と非常に肯定的な反応を2回も示している。

この質疑のやり取りをそのまま解釈すれば、現在の違法状態、そして解決するには6人を改めて任命するしかないということを菅総理は認識していると言えるのではないか。これまで任命拒否をめぐる問題の核心については頑なに口を閉ざしてきた菅総理だが、この質疑は問題解決に向けた大きなターニングポイントになるかもしれない。

<文・図版・動画作成/犬飼淳>

【犬飼淳】

TwitterID/@jun21101016

いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。