「あまりに突然で理不尽」男子高校生飛び降り 巻き添えになった女子大生の優しさ

「ドーン!」
金曜日の午後6時前、屋上にある赤い大観覧車がシンボルの大阪・梅田の商業施設「HEP FIVE」の出入口付近で、何かが爆発したような音が轟いた。
行き交う多くの人が目を向けた先では、スカートをはいた若い女性が頭から血を流してうつ伏せに倒れ、2メートルほど離れた場所で白っぽいシャツにチェックのズボン姿の男性が植え込みに顔を突っ込んで横たわっていた。直後、「キャー」という女性の大きな悲鳴が周囲に響き渡った――。
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10階建てビルの屋上から飛び降りた男性の身体が、下にいた女性を直撃する事故が起きたのは、10月23日のこと。目撃者が発生直後の様子を語る。
「2人ともぐったりとしていて、女性の横ではさっきまで並んで普通に会話をしていた若い女性が、泣き叫びながら懸命に肩をゆすっていたけど、応答はなかった。間もなく通行人の男性が女性のもとに駆けつけ、心臓マッサージを始めました。現場には血だまりができて、AEDの説明書や女性もののカバンなどが散乱していました……」
2人は病院に搬送されるも、男性はまもなく死亡が確認。屋上には財布と学生証の入った黒いトートバッグが残され、転落したのは大阪府立高校に通う17歳の男子生徒と判明した。
翌24日の午後2時12分、背中に男子生徒がぶつかって前方に跳ね飛ばされ、意識不明だった兵庫県加古川市の大学2年生、古川賀子(かこ)さん(19)の死亡が確認。死因は頭部損傷だった。
家族4人暮らしの古川さん「あまりに突然で理不尽」
古川さんは市内の集合住宅で両親と妹との4人暮らし。近所では家族で仲良さそうに買い物などに出かける様子が目撃されていた。
小学校の卒業文集では、歌を歌うのが好きで、将来は西野カナみたいな歌手になりたいと夢を綴っていた。中学の同級生は「動物好きで優しく、穏やかな性格だった」と振り返る。
「いつも明るく、周りを笑顔にしてくれました。中学では放送部に所属して、給食の時間に音楽を流したり、体育祭の時にアナウンスを担当したりしていた。猫を飼っていて、すごく可愛がっていましたね」(同前)
ジャニーズファンで「嵐」の櫻井翔やHey! Say! JUMPに夢中だったという古川さん。中学時代には山田涼介主演のドラマ『金田一少年の事件簿N(neo)』が好きで、主題歌を「これはええ曲やで」と同級生に勧めることもあった。放課後や休日は近所のイオンで友達とご飯を食べ、学校での出来事や恋愛の話をして盛り上がっていたという。
兵庫の県立高校を卒業後は県内の大学へ進み、勉学に励んでいた。
「あまりに突然で理不尽。言葉にならないほどショックです」(別の同級生)
一方、男子生徒の行動からは、自殺する明確な“意志”が読み取れる。
男子学生の自殺の動機は?
施設の従業員専用スペースに侵入してエレベーターで10階に上がると、屋上に通じる扉の内鍵を包むプラスチックカバーを破壊。防犯ブザーが発動したが、
「数分後に警備員が駆けつけるも、既に屋上に姿はなかった。身を投げることにためらう気持ちがなかったのでしょう」(社会部記者)
しかし、自殺動機は現在のところ分かっていない。
「遺書も見つかっておらず、学校関係者からの聞き取りでも、イジメなどのトラブルは確認されていません」(捜査関係者)
今後、この男子生徒は重過失致死容疑で被疑者死亡のまま書類送検され、不起訴になる見通しだ。しかし、大阪府警は殺人未遂での立件も捨てていないという。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年11月5日号)