捕獲クマに爆竹や唐辛子スプレー…「人の怖さ」教えてから解放、出没が激減

神奈川県伊勢原市子易地区で県内で今年度初めてツキノワグマが捕獲され、6日に駆除された。実は、県内のツキノワグマは絶滅危惧種。県は、クマを捕獲した場合、人の怖さを教え込んで放つ「学習放獣」を実施しており、このクマも昨年“学習済み”だったが、名産の柿の誘惑に勝てなかったようだ。(中村良平)
環境省によると、北海道、九州を除く国内では今年度上半期、クマの出没件数は過去5年で最多の1万3670件で、9月末までで86人が被害に遭った。ただ逆に県内では、目撃やフンなどの痕跡情報などを含めても、昨年度の371件(速報値)から今年度は10月末段階で58件(同)と激減している。
全国的に凶作となっている餌のドングリが県内では主な生息地の丹沢山地で豊作なのが、人里に現れない主な原因のようだ。東丹沢の表玄関の伊勢原市は、昨年度の出没件数が193件(同)と県内の半数を占めたが今年度は26件(同)と大きく減っており、それを裏付ける。
もう一つの理由は、県が推進する学習放獣の効果とみられる。県自然環境保全課の推測で2006年時点で県内のツキノワグマは40頭程度となり、県レッドデータブックで絶滅危惧種に分類された。同年以降、捕獲しても、爆竹や花火、唐辛子スプレーを用いて音と臭いで脅かしたうえで山に放っている。昨年度までに28件放獣し、3件が再捕獲されたが、再捕獲後に駆除した例はなかった。
それでも今回駆除に踏み切ったのは、最も甘い甘柿とされる名産の「子易柿」(禅寺丸柿)に執着していたことが大きい。このクマは昨年10月に子易地区の柿畑周辺で捕獲されて学習放獣され、今年も近くの柿畑で9月頃からセンサーカメラでたびたび確認され、人身被害が危惧された。捕獲してみると体長137センチで体重109キロと丸々と太ったオスの成獣で、駆除後、学術研究のため県立生命の星・地球博物館に送られた。
市農業振興課は「学習放獣の成果は出ているが、全国的には人の被害も出ている。今回のクマは危険を教えても人里に再三出てきており、やむを得ず処分した」としている。