「第3波」の大阪府 静かな飲食とマスク徹底呼びかけ 時短営業要請は見送り

大阪府は11日、新型コロナウイルスの対策本部会議を開き、12~28日の間、職場や飲食の場を中心に「静かな飲食」と「マスクの徹底」を呼びかけ、効果を検証する方針を決めた。府は「第3波」が到来しているとし、「全年代、さまざまな場面で感染が広がっている」と報告。一方、繁華街での感染者の比率は夏場より低いことなどから、多人数の飲み会の自粛や時短営業の要請は見送った。
府によると、10日までの1週間に確認された感染者は1014人と、前週の1・2倍に増加。北海道に続き、東京都や愛知県と同レベルで感染が拡大している。
会議では、感染が広がりやすい具体的な状況について議論。接待を伴わない居酒屋や飲食店で、感染が目立つとのデータが示された。これらの店舗を利用した感染者は直近2週間で231人おり、その前の2週間から倍以上に増えた。また、各保健所から聞き取ったところ、事務所内で長時間、言葉を発する業務を行った▽喫煙所で物の貸し借りをした▽友人同士で飲食店を訪れ、密接した状態で長時間飲食を共にした――などのケースで複数の感染例が確認された。府は感染につながる要因として、長時間の会話▽マスクの不着用▽換気不十分――などを挙げた。
吉村洋文知事は記者団に「特定のエリアや職種に偏っている状況ではない。一人一人の感染症に対する意識の積み重ねで、現時点では抑えていきたい」と話した。
一方、インフルエンザの流行期に入り、発熱患者がさらに増加することを想定。24日以降、かかりつけ医を通して、新型コロナやインフルエンザの検査が受けられる医療機関を紹介する体制を整える。これまでは保健所を介していたが、相談への対応や調整などを円滑化する。診察や検査ができる医療機関も、10日時点で971カ所確保した。
重症者は11日現在で63人となり、病床使用率は30・6%となった。府独自の指標「大阪モデル」では、使用率が70%以上にならない限り黄信号のままだが、府は集団感染の事例集を11月中に作成し、医療機関や福祉施設に配布して注意喚起する。【松本光樹、芝村侑美】
「春ごろのような危機感必要」
近畿大の吉田耕一郎教授(感染症学)の話 全国的に新型コロナの感染者数が増加しているが、人の交流を促す「GoToキャンペーン」が影響したのは間違いない。経済活動は大切だが、酒類を提供する飲食店などで感染対策を徹底することは極めて難しい。冬場は室内の換気が悪くなり、感染が更に拡大する可能性がある。繁華街では営業時間の短縮を行うなど、市民が春ごろのような危機感を再確認し、自制した行動を取るようなインパクトのある対策が必要だ。
「受診控えで重篤化懸念」
福田診療所(大阪市西淀川区)の福田弥一郎院長の話 新型コロナ感染が疑われる発熱患者が増えており、医療機関の緊張感が高まっている。そんな中、受診控えによる症状の重篤化を懸念している。実際に、盲腸の患者の受診が遅れ、悪化したケースがあった。医療機関では発熱患者と通常の患者の動線を分けるなど、安全策が取られる。高齢者や基礎疾患のある人は、我慢せず受診してもらいたい。