兵庫県西宮市沿岸部と対岸の埋め立て地の同市西宮浜を結ぶ歩行者・自転車用のはね橋「御前浜橋」(長さ約60メートル)の開閉を巡り、周辺住民らから中止を求める声が上がっている。帆柱があるヨットなどの航行のため、休日に1日4回、約15分ずつ橋が上がり、歩行者らが通行できなくなるが、桁下3・9メートル(満潮時)を超える高さの船が通ることは少なく、昨年度はゼロ。住民らは「橋を上げる必要がないのでは」と批判するが、市は民間業者に開閉業務の委託費を払い続け、「海上の自由航行を妨げないために開けている」と主張する。(佐藤直子)
「橋の開閉を行います」――。9月下旬、スピーカーから音声が響き、ゲートが閉じて橋が上がり始めた。「ああ、この時間に当たってしまったわ」。西宮浜に住む60歳代の主婦がこぼした。「冬は開閉を待つ間に体が冷える。船が通るなら我慢するけれど、見たことがない」と疑問を投げかける。この時も船は通らなかった。橋が下りると、待っていた数十人が徒歩や自転車で一斉に行き交った。
御前浜橋の完成は1999年。阪神大震災後、工業団地だった西宮浜に復興住宅ができて住民が増えたが、東側にある車も通行できる西宮大橋(長さ約590メートル、桁下約16メートル)は歩行者らにとっては勾配がきつく、市が生活の利便性向上を目的に歩行者・自転車用の橋の整備を決めた。近くのヨットハーバーに停泊している船の所有者らが航行の自由を求めたため、開閉式のはね橋が造られた。
当初は土日、祝日に1日5回、2011年度からは1日4回、開閉。桁下を超える高さの船の航行は、15年度に17隻、16~19年度は0~2隻しかなかった。ヨットハーバーを出る船の多くは、決まった日時にしか開かない御前浜橋を敬遠し、西宮大橋の下を通っているとみられる。一方、御前浜橋を徒歩や自転車で渡る利用者は、1999年から実施している市の調査によると、1日約1500~4100人に上る。
西宮市議会では、建設前から歩行者らの不便などを理由に、一部の市議が「はね橋である必要性はないのでは」と疑問を呈してきた。市は橋の完成以降、船の航行に関係なく、特定の民間業者に年間約300万円の開閉業務委託費を払い続けているが、市議らは「根拠があいまいだ」と指摘する。
市道路補修課は「海上は自由航行が原則」と、歩行者らの利用よりも船の航行が優先するとの考えを示し、「歩行者らに開閉を待ってもらうのは申し訳ないが、『もっと長く開けて』という港湾事業者からの要望もある。橋のあり方について検討を続けたい」とする。
西宮浜の住民らは9月末、「はね橋の開閉中止を求める会」を結成。今月27日に開会する市議会定例会に開閉中止を求める請願を提出するという。