富士急との対決再燃? 山梨知事、県有地訴訟で方針転換

山梨県が富士急行に貸している県有地の賃料が不当に安いとして争われていた住民訴訟で、被告の県が一転して原告に同調し「賃料は現在の6倍が適正」と主張した。長崎幸太郎知事と富士急行を経営する堀内家との対立が再燃した構図に見えるが、長崎氏は全ての県有資産の見直しの一環として、一歩も引かない構えだ。(渡辺浩)
被告が原告に同調
「本件各不動産にかかる賃貸借契約は違法無効と解さざるを得ない」
10日に甲府地裁で開かれた口頭弁論で、県側は契約を結んだ歴代知事を批判する内容の準備書面を提出。歴代知事の契約に故意や過失があったかどうか、県が検証委員会をつくって調査するとした。
問題の県有地は富士山麓の山中湖村にあり、県が昭和2年から富士急行に貸している。同社は別荘地やゴルフ場などとして開発し、転貸するなどしている。
県は平成29年には東京ドーム94個分の約440ヘクタールを20年間貸し出す契約を締結。賃料は3年ごとに更新し、同年は年額約3億2530万円。南アルプス市の男性が、県が歴代知事に適正な賃料との差額を支払わせるよう求めて甲府地裁に提訴していた。
県側は「賃料は年額約20億円が適正」との鑑定結果を提出。男性の弁護士は閉廷後、「双方の主張が合致した」と評価した。
原告と被告の言い分が一体となる異例の展開だ。県側は敗訴を回避するため、和解の申し入れを行う方針だ。
知事提訴も辞さず
収まらないのが、訴訟当事者ではないが補助参加人として参加している富士急行だ。
「ルールを変更するのであれば、まず県の中で十分話し合われるべきであり、それまでルールに従っていた企業側に非はない」と猛反発し、契約を無効とするなら長崎氏を提訴することもやむを得ないとのコメントを発表した。
県はこれまで賃料について、開発前の山林や原野だった「素地価格」を元に算定。富士急行は「当社が資金を投入して開発してきた事実が勘案されている」と評価していた。
ところが県は主張を変え、「富士急行が投入した資金は賃料が安いことによって既に回収されている」などとして、現在の別荘地などの状況を基に算定すべきだとした。
富士急行関係者は「賃貸住宅を借り主がリフォームしたら、家主が『きれいになったから家賃を上げる』と言っているようなものだ」と憤る。
自民再分裂の恐れも
長崎氏は17年の郵政選挙で富士急行元会長の堀内光雄元通産相への刺客として衆院山梨2区で出馬。現在の堀内詔子環境副大臣まで5回の選挙で堀内家と戦った。
29年の衆院選では県有地の賃料是正を「公約の1丁目1番地」と主張したが落選。昨年1月の知事選では堀内家と雪解けする形で自民党が一本化し、当選していた。
長崎氏は13日の県議会自民党会派への説明会で「訴訟の過程で過去の契約の重大な誤りが分かった」と方針転換を説明。県議から激しい批判は出なかったが、自民党関係者は「堀内氏を支持する県議の反発で、再び自民が分裂する恐れもある」と話す。
この日の記者会見で長崎氏は「県民共有の財産である県有地は適切な価格で貸し出す法律上の義務がある。政治的な対立は全く関係ない」と強調。そしてこう語った。
「行政は時に間違えることがある。間違えた場合は速やかに訂正することが必要だ」