都知事は中立でなく一方に積極的に加担 朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員長

関東大震災後の朝鮮人虐殺に心を痛め「過ちは二度と起こさない」と誓う人たちがいる。それに対し、同じ場所で「(虐殺の)犯人は不逞(ふてい)朝鮮人」と全く逆の主張を繰り返した人たちがいる。後者の発言を東京都はヘイトスピーチ(憎悪表現)と認定したが、都は双方に誓約書の提出を求めるなど、まるで「けんか両成敗」のようだ。中立とは何だろう。朝鮮人犠牲者追悼式典の実行委員長で弁護士の宮川泰彦さん(79)と考えた。【南茂芽育、後藤由耶】
――2017年以降、そばで保守系団体が集会を開くこともあり式典に注目が集まっています。今年は追悼式典に若者の姿も目立ちました。
◆なぜ97年たっても式典を開くかというと、忘却は再び悪夢を呼ぶ危険があるからです。虐殺があった事実にしっかりと向き合うことを積み重ね、世代を超えて語り継ぐことが、今を生きる私たちの責務だと思います。
――式典は長年静かに行っていたのに、都はトラブル防止のためと、双方に誓約書を書かせようとしました。
◆あぜんとしました。集会の自由を萎縮させるだけでなく、行政の公正・中立の点で大きな問題です。都は「同じ日時に行われる式典と集会で、一方にだけ『大音量を出すな』とは言えない」と考え、形式上双方に誓約書を書かせたかったのでしょう。
彼らの主張は「『(会場の追悼碑に記された)6000人の朝鮮人虐殺があった』との主張はうそで日本人を辱めるから、式典は中止させなくてはいけない」という内容です。私たちとそんな主張をする団体を同一に扱うのは中立ではなく、彼らに手を貸すものにほかなりません。
――小池百合子都知事は中立を旨とするからか、歴代知事も送った式典の追悼文を17年から送付しません。
◆歴史認識が透けて見える気がします。米国などで差別を否定しないことは差別への加担と見なされる風潮がありますが、知事は中立ではなく、一方に積極的に加担したと感じます。知事は虐殺について問われ「さまざまな見方がある。歴史家がひもとくもの」と述べました。歴史認識について触れられたくない政治家の常とう句です。
皮肉な話ですが、式典の参加者が増えたのは知事が追悼文の送付をやめてからです。今年はオンライン中継で比較できませんが、昨年は約700人が訪れました。従来は200人です。おかしいことはおかしいと声を出す。その積み重ねが大きなうねりを生み出すのは間違いありません。
朝鮮人犠牲者追悼式典を巡る都の対応
式典は毎年、関東大震災発生日の9月1日に東京都立横網町公園(墨田区)で開かれる。都は2019年12月、主催団体と、集会を開く保守系団体「関東大震災の真実を伝える会・そよ風」などとのトラブルを避けるためとして双方に誓約書を書くよう求めた。公園管理の支障となる行為があれば次年度以降会場を使わないとの内容に抗議が相次ぎ、都は今年7月に取り下げた。