全米図書賞に柳美里さん「JR上野駅公園口」英訳版 翻訳文学部門

アメリカで最も権威がある文学賞の一つ、第71回全米図書賞が18日(日本時間19日)発表され、翻訳文学部門に柳美里さん(52)の小説「JR上野駅公園口」の英訳版「TOKYO UENO STATION」(モーガン・ジャイルズさん訳)が選ばれた。同部門では、2018年に多和田葉子さん(60)の「献灯使」が受賞している。
「JR上野駅公園口」は14年に河出書房新社から刊行された長編小説。福島県出身の男の半生を描く。1964年開催の東京五輪の建設工事のため、出稼ぎに出た男は、やがて家族を失い、最後は上野公園でホームレスになる。戦後の経済的な繁栄に、逆の視点から光を当てた作品だ。
同作はこれまで韓国版、フランス版、英国版、ポーランド版が刊行され、米国版は米ケンタッキー州出身の翻訳家、モーガン・ジャイルズさんが英訳、今年刊行された。同書は米タイム誌が選ぶ今年の100冊に選ばれたほか、米紙「ニューヨーク・タイムズ」「ワシントン・ポスト」の書評にも取り上げられるなど注目され、全米図書賞の翻訳文学部門の最終候補5作のなかに入っていた。
柳さんは横浜市出身の在日韓国人。劇作家としても活躍し93年、岸田国士戯曲賞を受賞。96年には小説「フルハウス」で野間文芸新人賞、泉鏡花文学賞を受賞。97年、「家族シネマ」で芥川賞。15年に福島県南相馬市に移住し、18年4月、ブックカフェ「フルハウス」を開き、営業を続けている。【棚部秀行】