年末年始がコロナ対策の「大連休」になることにより犯罪に走るしか生きる術を持たない人々が存在することを西村大臣は知っているか

先日、西村康稔経済再生担当相が新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために年末年始の休みを1月11日の成人の日まで延ばすよう企業に要請すると発表したことがニュースになっていました。実際にどうなるのかはわかりませんが、多少は休暇が延びる企業もあるのではないかと思います。
企業が休むことがコロナ対策になるかどうかはさておき、気になることは役所にもこの要請が影響するのかどうか、です。
もし役所が大型連休に入っている時に突然生活に困窮するような事態が起きてしまったら一体どこを頼ればいいのでしょう?
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これは毎年、ゴールデンウィークや年末年始には発生している問題です。
それに加え、今のコロナが蔓延している状況です。裁判所に傍聴のために通っていると、主に万引きなどの財産犯で裁判を受けている被告人が
「コロナの影響で生活に困って…」
と犯行動機を話している光景は頻繁に目にします。
誰もがいきなり困窮に陥る可能性を持っています。そうなった時に、最後のセーフティーネットである役所の支援、つまり「公助」が受けられなければ犯罪に走ってしまう人も出てくるのです。
平成31年4月29日から始まり令和元年にまたがったゴールデンウィークは10連休という大型のものでした。
細谷賢治(仮名、裁判当時35歳)は連休の始まる前日、4月28日に窃盗罪での服役を終えて水戸刑務所を出所しました。まるでドラマのような話ですが、出所の際に刑務官から、
「もう二度と来るなよ」
と声をかけられたそうです。刑務官もまさか翌日に彼が再び逮捕されることになるとは思ってもいなかったと思います。
彼は刑務所を出てすぐ、「仕事を紹介する」と言ってくれていた知人に電話をかけました。しかしその知人は電話に出てはくれませんでした。後に彼はもう1度この知人に電話をかけることになります。犯行に至る直前です。その際にも知人が電話に出ることはありませんでした。
知人がいるのは東京です。連絡が取れなくてもとにかく東京に行けばどうにかなる。彼はそう考え、その日の夜行バスで東京に向かいました。
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彼は幼い頃に両親を亡くし名古屋の児童養護施設で育ちました。頼れる親族はいません。施設を出たあとは配管工や建設業などの職を転々としましたが、どの仕事も長続きしませんでした。
原因はパチンコです。
彼はギャンブル依存症の診断が出るほどにパチンコにのめり込んでいました。金銭に困ってトラブルを起こして仕事を辞めざるをえなくなる、そして仕事がないから困窮して犯罪に走りよりいっそう仕事に就くのが困難になる、彼はいつしかそんな沼にはまり込んでしまっていたのです。
水戸を出て東京に着いた彼が真っ先に向かったのはやはりパチンコ店でした。手元には刑務所で得た作業報奨金が9000円ほど残っていました。
「2000円だけ使おう」
そう思ってパチンコ店に入りましたが、その日の夕方には彼はほぼすべてのお金を使い果てしていました。
先ほど述べたように役所はもう10連休に入ってしまっています。頼れる親族もいません。頼れるはずだった知人は電話に出ません。
残った僅かなお金で彼は1本のカッターを買いました。
「ホームレスになるくらいなら捕まろう、と思いました。普通はあり得ないかもしれないですけど、捕まるのも初めてじゃないし慣れてるというか…抵抗はなかったです」
そして彼は110番通報をしました。
臨場した警察官にカッターを示し、現行犯逮捕となりました。

自己責任。自助。

そう言って突き放すのは簡単です。ですが、それをすれば犯罪に走るしかなくなる人間も出てきます。死ぬ人間も出てきます。(取材・文◎鈴木孔明)
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