大分県竹田市と熊本県阿蘇市、産山村に農業用水を供給するため農林水産省が同村に建設した大蘇(おおそ)ダムで、最大で想定の10倍もの漏水が起きていることが九州農政局などへの取材で明らかになった。2005年にいったん完成したが漏水が判明したため改修工事を実施し、今年4月に本格的な供用が始まったばかりだった。
農政局によると、大蘇ダムは堤防の高さ約70メートル、長さ約260メートル、総貯水量430万トン。1979年に事業着手し88年の完成を予定していたが、阿蘇火山由来の地質や想定外の亀裂などで05年にずれ込んだ。その後、試験供用中の08年に大規模な水漏れが判明したため、ダムの側面にコンクリートを吹き付けるなどの対策工事を進め昨年6月までに終了。当初約130億円だった総事業費は約720億円に膨らんだ。
対策工事後の点検で異常がなかったため、今年4月から農業用水の給水を始めたが、8月から1日1万5000トン程度の水が減り続けていることが判明。漏水量は水量や気象条件によって変化し、多い日は想定(1日当たり2000トン)の10倍に相当する2万トンが漏水している。必要な量の供給はできているが、農政局の担当者は「将来的に足りなくなることも想定される。原因を調査する必要がある」としている。
大蘇ダムからの給水に頼る受益面積は竹田市が1604ヘクタール、阿蘇市が92ヘクタール、産山村が169ヘクタールで計1865ヘクタール。全体の約9割を占める竹田市はこれまでに、ダム建設や漏水対策のため約27億6000万円を負担した。仮に大蘇ダムからの給水がなくなると、熊本県高森町にある大谷ダムからの時間を限られた給水に頼らざるを得ない状態に戻るという。竹田市の首藤勝次市長は「そもそも国の計画が甘かったのではないか。追加工事が必要になってもこれ以上の負担金は払えない」と語る。
農家の反発も強く、竹田市荻町でピーマンなどを栽培する衛藤喜一さん(65)は「41年たつのにまた振り出しに戻ってしまった。水がたまらないダムはいらない」と憤った。【津島史人、石井尚】