【小池知事「伏魔殿都政」を嗤う】#12
11月19日に行われた小池知事の臨時会見は、いつになく弁舌爽やかだった。しかし、中身を聞いて肩すかしを食らった。前週から感染確認者が急速に増加し続ける事態に何か具体的な対策を発表するかと思いきや、出てきたのはお決まりのフリップボードと小知恵をひねったキャッチコピーだったからだ。
このボードやフレーズは一体誰が考えているのか。まさか、都庁職員ではあるまい。小池知事には4年前に初当選したときから強力なCMプランナーが付いている。それを確信したのは、2017年6月20日の市場移転問題の基本方針を知事が発表した時だった。例の「築地は守る、豊洲を生かす」のお披露目である。
発表直前に送られてきた電子データを見ると、高名なCMプランナーの名前が記載されていた。それが悪いと言っているのではない。すべては、知事サイドで秘密裏に準備され、ある意図を持って発表されている点が問題なのだ。
■「5つの小」は用意周到な国への意趣返し
当然「5つの小」も何日も前から周到に準備され、満を持して発表したものである。臨時でも緊急でもない。この時期、飲食店に対する時短要請を巡って、東京都は国の資金支援を何割にするかで政府と水面下の攻防を繰り広げていた。
国から金を引き出すため、西村大臣からの要請に小池知事は首を縦に振らず、「5つの小」という派手な演出をもって、東京都はやるべきことはやっている(だから時短要請はしない)と主張したのだ。
この日の会見では論理矛盾が目立った。家庭内感染が増えていると散々説明しておきながら、ボードに記載されていたのは、1から5まで全部が夜の居酒屋向けの注意事項だった。ここに第2のイメージ操作がある。
そもそも、感染経路不明者がほぼ半分というデータの中で、家庭内感染が増えているから気をつけましょうと言い切ること自体、現実を見誤らせるに十分なのだが、知事もそんなことは百も承知で発言している。家庭内感染をことさらに強調することで飲食店への圧力を少しでも和らげつつ、実質的には飲食店の利用に対して注意喚起するという、大変わかりにくいことをしているのである。
■財政上の駆け引きがコロナ対策を遅らせた
結局、19日の会見はほとんど意味のない内容に終わった。だが、その間に東京都は国から資金支援を引き出した。時短協力金の8割を国が、残りの2割を地方が負担する内容は、よくやったと喝采したいところだが、今回の措置で東京都が国から引き出した財源は200億円のうちの144億円である。小さくはない。だが、都財政の規模と比較してどうなのか。
いや、そんなことより見過ごせないことがある。144億円をゲットするために費やした2週間の間に、コロナ感染は急速に深刻化してしまった。「小声で小皿で」とつぶやいているうちに、重症患者が急増したのは誰の責任なのか。時短要請のタイミングが遅れた責任はどこにあるのか。そこをはっきりさせなければいけない。
11月27日の定例記者会見で小池知事は、「前から重症患者が一番重要だと言ってきた」と発言。これも後付けのイメージ操作である。あたかも以前から重症患者数だけを重視してきたような物言いだが、それは違う。常にその日の患者数に一喜一憂してきたのは他ならぬ小池知事だったではないか。
この発言には何か裏があるなと思った矢先だった。案の定、会見直後の午後3時に発表された感染者数は570人、過去最高を記録した。この手の姑息なイメージ操作は、小池知事の言動を紐解けば枚挙にいとまがない。論点をずらし、自分へのダメージを少しでも弱めようとする意図が小池知事の発言には常につきまとっている。
「Go To トラベル」を巡る禅問答も同様である。27日の会見では、何人もの記者が「都から国にGo To 除外を申し出ないのか」と質問したが、小池知事は「出と入りを防ぐことが大切。全国的な視点が重要であり国が考えること」と繰り返すだけだった。いやいや、出と入りが大切だからこそ、なぜ国にそうすべきと正式に要請しないのか、と問われているのですが……。
小池知事の言動には注意しても、し過ぎることはない。間違っても文字面だけで判断してはいけない。まんまと術中にはまってしまうからである。
(澤章/東京都環境公社前理事長)