児童相談所(児相)の一時保護のあり方を有識者と考える兵庫県明石市の検討会が11日、同市内で開かれた。2018年に虐待を疑われ、1年3カ月にわたり生後50日の男児との別離を余儀なくされた両親が出席し、「児相の対応には不信感しかない。家族のかけがえのない時間を奪われた」と訴えた。検討会では一時保護に関わった県の児相に対し、検証に加わるよう求めることを決めた。【三野雅弘】
「まるで人さらいのように息子を連れ去られ、手続きの説明が全くありませんでした。月1回ほどに限られた面会では大切なだんらんの時間を監視され、度重なる誹謗(ひぼう)中傷も。なぜ家族分離されなければならなかったのか。いまだに理解ができません」
陳述に立った母親はそう、声を震わせた。県は18年8月に男児を一時保護した。乳児院への入所の承認を求める審判を家庭裁判所に起こしたため、原則最長で2カ月間の一時保護は長びいた。児相機能が19年4月に市に移管されてからも待遇は改善されず、両親の行政への不信感は根強い。父親は、市が20年9月にまとめた内部検証の報告書を「淡々とした内容だ」と批判した。
検討会では、委員から「最初の県の判断抜きの検証はない」との声が相次ぎ、市は12月中に県と協議する方針を示した。県の児相は、現時点では検証の意向を示していないが、「協力できる部分は市に協力したい」としている。
検討会では、一時保護の妥当性や期間をチェックする第三者組織の創設や、保護中の面会や通学の保障についても議論した。
事務局の市が説明した第三者組織のイメージは、司法関係者や児相経験者ら数人規模で構成。点検は、少年事件や他国のケースを参考に、保護後2週間をめどに始めるとする内容だ。一時保護の全件を対象とするかなどを検討会で議論したうえで、21年4月からの運用開始を目指す。
親子面会で、市は既に子どもが希望すれば親との面会を原則自由とする運営に改めている。泉房穂市長が自ら立ち会ったケースもあるという。
ただ、現場からの抵抗は強いのが実情だ。大阪市で児相所長を経験したNPO法人「児童虐待防止協会」の津崎哲郎理事長(76)は「心理的圧迫を軽視しすぎだ」と指摘する。子どもが親の影響から抜け出して本心を語るのに2、3週間かかる場合もあるといい、検討会でも、委員から同様の懸念が示されていた。
泉市長は「子どもの権利を最優先に考えるという発想の転換が必要だ。一時保護下で制限されてしまう子どもの権利を守る努力をしなければならない」と力説。「明石市のやり方はありだな、と全国の児相に思ってもらえれば」と話した。
虐待が疑われた男児の対応をめぐる経過
2018年8月10日 男児の腕の骨折が判明
17日 県の児相が男児を一時保護
10月11日 県の児相が乳児院への入所を申し立て
19年4月1日 開所した明石こどもセンターに移管
8月9日 神戸家裁明石支部が申し立て却下
28日 センターが即時抗告
11月15日 大阪高裁が抗告棄却決定
18日 男児の一時保護を解除し家庭復帰
20年9月10日 明石市長が両親に謝罪
11月2日 市が一時保護のあり方の検討会を開始