「感染収束以外、解決策ない。耐え忍ぶしか」 GoTo一斉停止、事業者苦悩

新型コロナウイルスの感染拡大で、旅行需要喚起策「GoToトラベル」事業が大きな方向転換を余儀なくされた。東京都と名古屋市を目的地とする旅行は事業の対象外となり、今月末からは全国で事業そのものが止まる。「予約キャンセルが相次ぐ」。観光業者から悲鳴が上がる一方、医療関係者からは「政府の対応は遅すぎる」との声もあった。
14日夕、東京・浅草の浅草寺に続く仲見世商店街を行き交う人はまばらだ。
「すでに仲見世では閉めた店もある。GoToを完全にやめられたら、もっと悪くなる。別の支援が必要だ」。外国人向けの法被や甚平などを販売する鈴木明子さん(77)は嘆いた。
コロナに負けまいと、江戸時代の火消し「め組」のロゴをあしらったマスクなどを並べて集客を図ってきたが、成果は出ていない。「30日働いてコロナ前の1日の売り上げになるかどうか。厳しい実情を国は知ってほしい」と話す。
コロナ禍が広がり、あきらめムードの店主もいる。別の土産物店を営む男性(52)はGoToについて「やめていい」と強調する。「何を言ったところで国には期待できないよ」
4~9月の売り上げは前年同月比で9割以上減った「はとバス」(東京都)。都がGoToの発着対象になった10月から客が戻り、11月は前年同月比7割減程度で、回復の兆しも見えていた。
ところが、12月は「第3波」で再びツアー客が減少。さらに追い打ちをかけるようにGoToの一時停止の知らせが届いた。
今後、大量のキャンセルが出る懸念もある。煩雑な事務作業も待ち受けるが、担当者は「感染収束以外に解決策はない。なんとか耐えて、忍んでいくしかない」と話した。
旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)の国内旅行の受注額は、10月は前年同月比81%にとどまっていたが、11月は7%増に復調。12月は45%増、1月は80%増を見込んでいる。しかし、今後は「キャンセルが相次ぎ、回復していた受注が減る可能性もある」(広報担当者)と気をもむ。
一方、医療従事者からは、GoTo一時停止の判断が遅れた政府への批判が相次いだ。
「今は人の移動を止めて感染を抑える時期だ」。都内の民間病院の男性事務長は強調する。
この病院では中等症以下のコロナ患者しか対応できず、重症化すれば転院させる必要がある。しかし、ほかの病院の重症病床の空きは減っているのが現実だ。「最悪の場合、うちで重症患者の対応をすることになる」と厳しい状態が続いていることを明かす。
12月に入り、発熱外来に訪れる人も急増し、医療体制はさらに逼迫(ひっぱく)している。
「政府の対応の遅れのしわ寄せが、結局、医療関係者の方に来ているように感じる」
軽症のコロナ患者を受け入れる都内の別の病院の院長も「医療関係者の頑張りには限界がある。自粛を呼び掛けるメッセージにするためにも、一時停止の網は広くすべきだ」と訴える。
院長は「感染者の全体数を減らさない限り医療現場の負担は軽減しない。GoToに限らず、その場しのぎの対応ではいずれ医療崩壊につながる」と批判した。【松浦吉剛、李英浩、黒川晋史、島田信幸、小坂剛志】