1966年に起きた「袴田事件」で死刑が確定した袴田
巌
( いわお ) 元被告(84)側が裁判のやり直しを求めた第2次再審請求の特別抗告審で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)は、静岡地裁の再審開始決定を覆した東京高裁決定を取り消し、審理を同高裁に差し戻した。同小法廷は、「犯行時の着衣」と認定された衣類に付着する血痕の色の変化について、「検討が不足している」と判断した。
決定は22日付で、裁判官5人のうち3人の多数意見。林景一、宇賀克也の両裁判官は再審を開くべきだとする反対意見を付けた。再審請求を巡り、反対意見が付いたのは初めてとみられる。最高裁は結論の方向性を示していないが、今後の審理次第では、改めて再審が認められる可能性がある。
同小法廷は、事件の1年2か月後に現場近くのみそ工場のタンク内で見つかり、確定判決が「元被告が犯行時に着ていた」とした衣類の血痕の色に着目した。
血痕は発見時の捜査書類に「濃赤色」などと記載されていた一方、弁護側が行った再現実験では、1年2か月間みそに漬けた衣類の血痕は黒褐色になっていた。
元被告は事件から2か月後に逮捕され、弁護側は「逮捕前に衣類をタンクに隠したのなら、血痕は黒褐色になる」などと主張。同小法廷はこうした点を、「長期間のみそ漬けが血痕に与える影響を専門的に検討する必要がある」とした。
その上で、「みそに触れた血液は化学反応で黒褐色になる」とした科学者の意見書が提出されたにもかかわらず、高裁は十分な証拠もないまま退けたとし、「審理を尽くしておらず違法だ」と結論づけた。
今回の再審請求審では、血痕のDNA型が元被告と一致するかどうかが大きな争点となり、2014年3月の地裁決定は、「元被告の血痕ではない可能性がある」とした弁護側のDNA型鑑定の信用性を肯定。これに対し、18年6月の高裁決定は信用性を否定し、同小法廷もこの高裁の判断は「正当だ」と認定した。
元被告は地裁決定と同時に釈放されている。
決定のポイント
▽犯行時の着衣とされた衣類に付着した血痕の色の変化について、審理が尽くされていない
▽みそ漬けされた血液に生じるという化学反応について、専門的な知見を調査する必要がある
▽弁護側のDNA型鑑定の信用性を否定した点は、東京高裁の結論が正しい
◆袴田事件=1966年6月30日未明、静岡県清水市(現・静岡市清水区)のみそ会社専務宅が全焼し、焼け跡から家族4人の他殺体が見つかった。県警は同8月、住み込みの従業員だった袴田元被告を強盗殺人容疑などで逮捕。静岡地裁は68年9月に死刑を言い渡し、80年11月に最高裁が元被告側の上告を棄却した。81年4月に始まった第1次再審請求も退けられていた。