大阪府岸和田市庁舎の建て替え事業が混乱している。事業者を選ぶ最終審査が突然延期され、選定委員6人のうち4人が相次いで辞任した。約127億円の予算が投じられる巨額事業だが、市は「審査に影響する」として詳しい理由を公表していない。経緯の不透明さを指摘する声が強まっており、市議会は24日に特別委員会を開いて市側に説明を求める。
「公明性を厳正に担保しなければならないという理由から、急きょ開催を見送る判断に至らざるを得なかったことを大変申し訳なく思っております」。選定委員長だった仲隆介・京都工芸繊維大教授は7日、他の委員と連名で、審査延期について記した文書をフェイスブックに投稿した。
事業は、老朽化した市庁舎の旧館と新館を現地で建て替えるもので、2029年の完成を目指している。市は設計・建設業者を選ぶため、建築の専門家ら外部委員5人と堤勇二副市長の計6人で構成する選定委員会を設置。参加業者が提出した技術提案書を採点する「公募型プロポーザル方式」で9月に1次審査を実施し、今月4日の最終審査で決める予定だった。
しかし市は7日、「スケジュールを大幅に変更しなければならなくなった」と延期を発表。18日には市議会で、外部の選定委員4人が辞任し、代わりに建設部長ら市職員2人を任命したと明らかにした。議会からは辞任理由の説明を求める声が相次いだが、市側は応じなかった。
関係者によると、最終審査に残った複数の事業者の一部が堤副市長を訪問し、名刺を置いて帰った。実施要領では「選定委員に故意に接触を求めた場合」は失格にすると定めており、市は規定に抵触すると判断して事業者を失格にしたという。ただ、事前に選定委員会に相談せず、最終審査前日になって伝えたため、委員らの不信感を招いたとみられる。
仲教授が投稿した文書には、「委員が状況を詳細に把握していない状態で審査を行うことは公明性を担保できるのか」「市の未来に大きな影響を与える重大な決定事項であり、性急に判断して良いことではない」などと記されている。
市は21日、最終審査を27日に行うと発表。当初は、受注業者を決定後、プロポーザルに参加した全ての事業者名を公表するとしていたが、事業者数のみ公表するように規定を変えた。ある市議は「市のやり方はあまりにも強引で不透明だ」と批判している。
永野耕平市長は21日、毎日新聞の取材に対し、「審査に影響するので何も言えないが、公明正大にやっており、問題はない。事業者が決まればきちんと説明する」と話した。
全国市民オンブズマン連絡会議幹事の井上善雄弁護士(大阪弁護士会)は「市庁舎は市民のもので、事業も税金でまかなわれている。市長がきちんと説明し、透明性と公正性を示さなければ禍根が残る」と指摘している。【鶴見泰寿】