ゴキブリ「大嫌い」から一転、新種発見…今では自宅で1万匹以上飼育

静岡県磐田市竜洋昆虫自然観察公園職員 柳沢静磨さん 25

ゴキブリの新種発見――。日本動物学会が発行する英文学術誌「ZOOLOGICAL SCIENCE」の電子版(11月24日)に、5人の共同研究チームによる論文が掲載された。その主要メンバーだ。
「ただの昆虫マニアにすぎなかったのに、大好きなゴキブリで新種を見つけるなんて」と、今でも興奮が収まらない様子だ。
国内のゴキブリは57種が確認されていた。これに今回、ウスオビルリゴキブリとアカボシルリゴキブリの2種が加わった。新種発見は35年ぶりとなる。
2018年のことだ。のちにウスオビルリゴキブリと命名される幼虫を沖縄県・与那国島で採集した。羽化させると、美しいブルーメタリックの

上翅
( じょうし ) に黄赤色の帯状の紋がある。これまで知られているルリゴキブリとは形態が違う。「別の種類だ!」と、うれしさが込み上げてきた。
その時は、先のことを考えていなかった。法政大の教授がたまたま自宅を訪れ、ゴキブリの話を伝えると、研究することを提案された。その後、鹿児島大の研究者がアカボシルリゴキブリを捕まえていたことが分かり、共同で研究を進めた。
主に個体の採集、飼育、繁殖と、論文の執筆を受け持っている。一番苦労したのは、英語で論文を書くことだった。教授に指導を仰いだところ、戻ってきた文章は大幅に直され、「(自分が書いた)原文が残っていなかった」と苦笑する。
幼い頃から昆虫好きだった。それでも一般の人と同様に、「ゴキブリは人一倍嫌いだった」と告白する。屋内に生息するゴキブリのイメージしかなく、小学生の時、愛読する昆虫図鑑は、ゴキブリのページをテープでとめて開かないようにしていたほどだ。
昆虫に携わるようになった現在の仕事に就いてからも、職場でゴキブリを見かけると体が固まった。来館者に「ゴキブリも好きなの」と聞かれた時、「それだけは駄目」と、正直に答えるしかなかった。
転機が訪れたのは17年。沖縄へ昆虫採集に出かけ、森の中の朽ち木で腐植質などを餌にするゴキブリを見た。色や形が今まで知っていたものとは異なる多様なゴキブリがいることを知り、どんどん深みにはまった。今では自宅で100種類、1万匹以上のゴキブリを飼育している。
その魅力について、「嫌われているから好き」と説明する。ゴキブリだからこそ、解説すればおもしろがってもらえるし、新種を発見すれば話題にもなる。「昆虫に興味を持ってもらうのが私たちの仕事。それには格好の生き物」と思い、18年から自ら企画してゴキブリ展を開催するようになった。
新種は現在、竜洋昆虫自然観察公園で展示している。来館者から「こんなゴキブリならかわいい」という感想が寄せられ、「2年半頑張った苦労が報われました」と頬を緩めた。
新種の研究は継続する。そして、いずれは「一般の人向けのゴキブリ図鑑を出版したい」と夢は膨らんでいる。(小野孝夫)

東京都八王子市出身。自宅ではリクガメ、キイロアナコンダも飼育する。同じく虫好きの妻(33)はタランチュラなどのクモをかわいがる。時々、餌としてゴキブリをねだられるという。