2019年12月10日。広島地検で29歳の若手検事が自ら命を絶った。「河井案里氏陣営疑惑で、同地検が捜査着手」と報じられる約20日前のことだ。 この若手検事は検事に任官された後、東京地検で新任検事としての勤務を終え、広島地検に配属された「新任明け」の検事だった。当時、公判部に所属していて、河井事件には直接関わっていない。 ■「司法修習生以下」と叱責 関係者によると、検事はその日、担当する事件の公判が午後に予定されていたが、出勤時間になっても地検に姿を見せなかった。不審に思った事務官が自宅に向かうと、すでにぐったりした状態で亡くなっていた。状況から自殺は明らかだったという。部屋には、「検察官にあるまじき行為をして申し訳ありません」とのメモも残されていた。 若手検事はなぜ、自ら命を絶ったのか。親しい友人とのLINEのやりとりの中に、それを示唆するメッセージが残されていた。 「久し振りに決裁で、(上司である次席検事から)色々言われたわ。『お前がそもそもこの事件を理解してなくて証拠構造整理できてねーじゃねーか。お前は今までどういうつもりで公判検事やってきてんだ』とか。机バンバンみたいな感じになったわ。『話にならない。』と」(2019年12月2日) この日、若手検事の様子を間近に見ていた同僚がいる。同じ公判部で机を並べていた橋詰悠佑氏だ。同氏は2020年7月に検事を退官し、現在は都内で弁護士として活動している。 「苦労して書き上げ、部長もOKを出した論告(検察官の意見陳述)を(広島地検のナンバー2である)次席検事に決裁を求めに行ったところ、激しい叱責を受けたそうです。彼は自席に戻るなり、司法修習生以下と言われたと、悔しそうに言っていました」 厳しい司法試験をパスし、誇りを持って仕事に臨んでいた若手検事。直属の上司である公判部長の決裁は通ったはずなのに、その上の次席検事から厳しい叱責を受けたことに、強いわだかまりと無力感を覚えたのだろうか。友人に送ったメッセージでは、心の内をこう吐露している。 「P(検事)なったの間違ったかな。ダメだ」(2019年12月4日) 「泣きすぎだな。」(同6日) 「明日からに、怖さを感じている俺は、もはや末期なんだろうか」(同8日) ■調査結果に職員から不満の声 広島地検は若手検事の死を受けて内部調査に乗り出し、総務部長がヒアリングを始めた。しかし、身内による調査に疑問の声が上がったため、代わって上級庁にあたる広島高検が、公判部をはじめとして関係職員へヒアリングなどを行った。
2019年12月10日。広島地検で29歳の若手検事が自ら命を絶った。「河井案里氏陣営疑惑で、同地検が捜査着手」と報じられる約20日前のことだ。
この若手検事は検事に任官された後、東京地検で新任検事としての勤務を終え、広島地検に配属された「新任明け」の検事だった。当時、公判部に所属していて、河井事件には直接関わっていない。
■「司法修習生以下」と叱責
関係者によると、検事はその日、担当する事件の公判が午後に予定されていたが、出勤時間になっても地検に姿を見せなかった。不審に思った事務官が自宅に向かうと、すでにぐったりした状態で亡くなっていた。状況から自殺は明らかだったという。部屋には、「検察官にあるまじき行為をして申し訳ありません」とのメモも残されていた。
若手検事はなぜ、自ら命を絶ったのか。親しい友人とのLINEのやりとりの中に、それを示唆するメッセージが残されていた。
「久し振りに決裁で、(上司である次席検事から)色々言われたわ。『お前がそもそもこの事件を理解してなくて証拠構造整理できてねーじゃねーか。お前は今までどういうつもりで公判検事やってきてんだ』とか。机バンバンみたいな感じになったわ。『話にならない。』と」(2019年12月2日)
この日、若手検事の様子を間近に見ていた同僚がいる。同じ公判部で机を並べていた橋詰悠佑氏だ。同氏は2020年7月に検事を退官し、現在は都内で弁護士として活動している。
「苦労して書き上げ、部長もOKを出した論告(検察官の意見陳述)を(広島地検のナンバー2である)次席検事に決裁を求めに行ったところ、激しい叱責を受けたそうです。彼は自席に戻るなり、司法修習生以下と言われたと、悔しそうに言っていました」
厳しい司法試験をパスし、誇りを持って仕事に臨んでいた若手検事。直属の上司である公判部長の決裁は通ったはずなのに、その上の次席検事から厳しい叱責を受けたことに、強いわだかまりと無力感を覚えたのだろうか。友人に送ったメッセージでは、心の内をこう吐露している。
「P(検事)なったの間違ったかな。ダメだ」(2019年12月4日)
「泣きすぎだな。」(同6日)
「明日からに、怖さを感じている俺は、もはや末期なんだろうか」(同8日)
■調査結果に職員から不満の声
広島地検は若手検事の死を受けて内部調査に乗り出し、総務部長がヒアリングを始めた。しかし、身内による調査に疑問の声が上がったため、代わって上級庁にあたる広島高検が、公判部をはじめとして関係職員へヒアリングなどを行った。