「先に支援拡充を」 罰則強化に大阪の繁華街悲鳴 特措法改正案

国会で審議入りする新型コロナウイルス対策の特別措置法改正案で、政府は営業時間の短縮などの命令に従わない事業者に対する過料を設けた。現行法でも時短や休業の要請に応じなければ知事は店名を公表することができるが、ペナルティーを強めようとする政府に対し、飲食店の関係者からは「経営の支援拡充が先ではないか」と疑問の声が上がる。
「経営が苦しいので、過料という不要な支払いは避けたい」。大阪市の繁華街・ミナミで数店のたこ焼き店を展開する運営会社の男性マネジャー(48)は、心理的な影響よりも経済的な事情を口にする。
2020年11月下旬から延長が繰り返された大阪府の時短要請には応じていなかったが、緊急事態宣言後の14日からは要請に従っている。店内飲食は午後8時までに限り、宅配は深夜まで営業して夜の仕事を続ける常連客にも対応。「国による緊急事態宣言は重みが違い、医療崩壊や感染拡大を防ぐために協力する」と話す。
「時短に応じたくないのが本音」
一方、要請に応じた店舗に支払われる1日当たり6万円の協力金について「人件費をまかなえる金額にはほど遠い。従業員の生活を守るために時短には応じたくないのが本音だ」と嘆く。街の人出を見極めながら通常営業に戻すことも考え始めている。
気がかりなのは時短を拒んだ場合の店名公表だ。20年春の緊急事態宣言では要請に応じなかったパチンコ店への激しいバッシングが起きた。「店の名前が出れば、嫌がらせの電話や、SNS(ネット交流サービス)で中傷の書き込みをされるかもしれない。『自粛警察』から店や従業員の安全を守る必要がある」と悩みは深まる。
大阪府内の飲食店やバーなど約1000店が加盟する府社交飲食業生活衛生同業組合の福長徳治理事長(79)は罰則や店名公表について「政府による『最後の手段』と理解はするが、ペナルティーを科しても、経営が苦しければ店が要請に応じるとは限らない」と語り、効果は限定的だとみる。
福長さんが強く求めるのは、政府からの丁寧な説明や協力金の拡充だ。「国や専門家から科学的な根拠に基づいた納得できる説明がないまま、飲食店ばかりが不利益を被るのはおかしい。個人経営でも従業員が多い店でも協力金を一律の金額にするのは、本当の意味での平等にはならない。十分な補償ができるよう議論を深めてほしい」と訴える。【鶴見泰寿】
府内に飲食店10万店、行政の実情把握難航
大阪府の吉村洋文知事は飲食店への時短要請に「大半が協力してくれている」として、応じない場合の店名公表には慎重だ。飲食店の数が約10万と膨大で、公平な公表が簡単ではない実情もある。府は市町村と連携して見回りを強め、協力を求め続ける方針だ。
府内に約10万店ある飲食店のうち、元々午後8時までに閉店する店もあり、正確な対象店舗数は分からないのが実態。府幹部は「公表するには公平性を確保する必要があるが、10万もの店を職員が実際に見て回ることは難しい」と打ち明ける。吉村知事は20日の記者会見で「感染防止策を取っていない危険な店があるという報告はない。協力を引き続きお願いしたい」と述べた。【芝村侑美】