新型コロナウイルス感染症の治療にあたる病院が、症状の落ち着いた患者の転院先を見つけるのに苦労している。人にうつす恐れがほとんどなくなっても、風評被害や院内感染を懸念する病院が少なくないためだ。重症を脱した患者についても軽症・中等症用の病床が逼迫(ひっぱく)するため転院が進まない。こうした目詰まりが重なって病床が効率的に利用されず、重症者の治療や救急患者の受け入れに影響を及ぼしている。
「新型コロナの退院基準を満たしても、なかなか受け入れる病院が見つからない」。東京大医学部付属病院の岡本耕医師は転院先を見つける苦労を語る。
国の基準では、発症から10日間過ぎたうえ、さらに症状が軽くなってから72時間が経過した場合はPCR検査で陰性を確認できなくても退院できる。PCR検査で陽性となっても人にうつす可能性は低いとされるためだ。
退院基準を満たしても体力が落ち、すぐに自宅に戻れない高齢者もいるが、こうした患者は本来、感染症対策を施していない病床でも受け入れ可能だ。だが、岡本医師が転院可能かを問い合わせても、念のためとしてPCR陰性の確認を求める病院があるという。
東大は重症8床、中等症等30床を運用するが常にほぼ全てが埋まる。人工心肺装置「ECMO(エクモ)」や人工呼吸器での治療が必要な患者の受け入れ要請が絶えず、症状が改善した患者はなるべく早く他の病院に移したい。だが、他の病院の軽症・中等症病床も逼迫し、半分以上は断られる。週に1~2回は厳しい状況に陥るといい、森崎裕医師は「提供できる医療を狭めている。新規入院患者を断らざるを得ず、心苦しい」と話す。
転院先を見つける苦労は首都圏だけではない。福岡県の3次救急病院によると、以前は新型コロナの回復患者を転院させてくれた近隣の病院が最近、相次いで風評被害を理由に断るようになった。「これ以上病床が埋まると救急を断らざるを得ない」と危惧する。
対策として厚生労働省は昨年12月以降、新型コロナから回復した患者の入院について診療報酬を1日最大1万4500円増やした。慢性期患者の長期入院を想定する療養病床でも新型コロナの受け入れを拡大するため、一般病床と同様の病床確保料や診療報酬を支払う。厚労省幹部は「民間の中小病院で新型コロナ患者を受け入れている割合は低いが、回復患者の治療などで拠点病院を後方支援してほしい」と語る。【原田啓之】