支店を訪れた女性は「息子」からの電話を信じ込んでいた。2020年11月26日、大阪市港区の「りそな銀行市岡支店」に市内の80代女性が来店した。300万円を引き出そうとする女性に、職員の紙谷祐子さん(35)が使い道を尋ねると「息子が会社のお金を使い込んだ」と訴えた。詐欺ではないか。紙谷さんは上司に伝えて警察に通報した。大阪府警港署員が女性から事情を聴くと、前日も700万円の特殊詐欺被害に遭っていた。「現金を取りに来る犯人を捕まえましょう」。署員は女性に「だまされたふり作戦」を持ちかけた……。
始まりは2日前。24日夕方に女性宅に息子を名乗る男から電話があった。「風邪で声がおかしい」「携帯をなくした」など他愛もない会話だった。翌日も電話があり、「息子」は本題を切り出した。
「同僚に一緒に仕事をしようと言われ、名義だけ貸した。その会社が倒産して借金ができた」。信用した女性は、タンス預金などを集めて700万円を段取りすると、男から「知り合いに取りに行かせる」と言われ、近所の公園で現金を入れた手提げかばんを若い女に渡した。
26日にも「足りなかったので会社の金を使った。バレたらクビになる」と連絡があった。女性は預金を引き出すため、支店を訪れたところだった。
その日の午後、待ち合わせ場所の公園に前日と同じ若い女が現れた。待ち伏せした署員らが詐欺未遂の疑いで現行犯逮捕した。17歳の少女だった。街で見知らぬ男に声をかけられ、詐欺グループに加担したという。だまし取られた700万円は駅のコインロッカーに保管したままだと分かり、無事に女性の元に戻った。
女性の被害を救った紙谷さんには、21日に署から感謝状が贈られた。紙谷さんは「まさかテレビで見るような事が起きるとは思わず、ドキドキした。被害金が女性に戻り、本当に良かった」と胸をなで下ろした。署は「被害防止には積極的な声かけが必要で、本当にありがたい」とたたえた。
府内では、今年に入って高額の特殊詐欺被害が相次ぎ、被害総額が既に1億5000万円を超えており、府警が注意を呼びかけている。【榊原愛実】