[コロナ最前線 民間救急]軽症者らを次々と搬送…緊急走行なし、時間との闘い

新型コロナウイルスの感染拡大で救急医療の現場が

逼迫
( ひっぱく ) する中、「民間救急」の需要が高まっている。保健所や個人からの依頼で、主に軽症者を指定された病院に運び、重症者対応に追われる自治体の業務を支えている。東京都などに緊急事態宣言が再発令されてから1週間後の今月14日、事業者の業務に密着した。(大井雅之)

「さあ、今日も気を抜かずにいこう」。14日朝。民間救急事業者「フィール」(東京都日野市)代表の斉藤学さん(37)は防護服に袖を通し、医療用マスクとフェースシールドをつけると、表情を引き締めた。
AED(自動体外式除細動器)や心電図モニターなどを備える車を1人で運転し、新型コロナに感染した東京・多摩地区の70歳代女性宅へ。女性は38度を超える熱があり、ふらついていた。「足元に気をつけて」。体を支え、車両の後部座席に座らせる。
運転席から「息苦しくないですか」などと声をかけ続けた。新型コロナの患者は容体が急変することが少なくないためだ。地域医療の拠点となる大規模病院に着くと、防護服姿の看護師に女性を引き渡した。
次の搬送予約は40分後。「時間がない」とつぶやくと、急いで車内を消毒し、十数キロ先の住宅街へ。民間救急車にサイレンや赤色灯はなく、緊急走行はできない。何とか間に合い、発熱してせきもある70歳代の男性を乗せると、再び病院へと向かった。

同社は2010年設立で、現在、保有車両4台のうち3台を新型コロナ用とする。この日は計13人を搬送し、すべての車が会社に戻ったのは日付が変わった後の午前1時半過ぎだった。
新型コロナ関連の搬送は昨年11月に108件だったが、感染が拡大した12月は184件に急増。今月はさらに増え、25日までに計260件に上った。搬送料金は1件6万~10万円程度で、保健所からの依頼は全額公費で賄われる。
感染者数が急増した年末から、病床が逼迫して患者を受け入れられない病院が増えたため、1件あたりの搬送距離が長くなった。多摩地区から東京23区の東部まで片道約50キロを走ることも少なくない。保健所から軽症と聞いていた患者が、搬送時には既に症状を悪化させていたケースもあった。