緊急事態宣言は延長へ調整。社会の雰囲気でコロナ対策が決められる危うさ

2月7日に期限を迎える緊急事態宣言について、菅内閣は延長する方向で調整に入った。3月7日まで期間を延ばすのだが、新型コロナウイルスの猛威に半ば屈した格好だ。

◆3月7日までの延長へ。緊急事態宣言出口戦略の是非

全国紙政治部記者が語る。

「もともと菅首相はコロナを風邪やインフルエンザ程度と捉えており、厳しい措置を取ることには否定的でした。それが『こんなに感染者が出るとは思っていなかった』と意気消沈。自民党内でも求心力を失っています。

GoToキャンペーンの旗振り役だった二階俊博幹事長ですら『経済を回すために緊急事態宣言を解除しろ』という働きかけを控えるようになりました。菅政権の言動や政策はブレブレで、国民の失望を招き、支持率は大幅に低下しています」

◆雇用を取り巻く情勢の厳しさ

緊急事態宣言の延長により心配されるのは、我が国の経済情勢だろう。昨年4月に出された1回目の緊急事態宣言はおよそ1か月半にわたって発令されたが、同年4~6月期のGDPの落ち込みは年率換算で27.8%と戦後最大だった。

今回の緊急事態宣言によって同規模、あるいはより深刻なダメージは避けられない。経済アナリストの森永康平氏が言う。

「GDPの落ち込みも懸念されますが、それ以上に根深い問題になると思われるのが雇用です。’20年平均の有効求人倍率は1.18倍と、前年比0.42ポイントの低下で、これはオイルショックに次ぐ下落ぶりです。休業者の数も過去最大となり、完全失業率も2.8%。あらゆる指標が雇用を取り巻く情勢の厳しさを物語っています。

昨年から緊急事態宣言が出ては延長されているので、雇用する側からするとそう簡単には人を採用できないマインドになっています。コロナ収束後に経済が回復しようとする際、労働力が必要なのに今後の見通しが立てづらく、計画的に人を採用できない。

結果、非正規雇用が多いサービス業従事者を中心に多くの人が苦境に立たされ、再雇用されにくい構造になってしまっている。残念ながら、追い詰められた社会的弱者は今後ますます増えていくでしょう。どうやって救済していくのか。緊急事態宣言を継続するならば補償や給付金、あるいは消費税の減税なども政府は考えていかなければならない」

社会的弱者の困窮ぶりは、’20年の自殺者がリーマン・ショック以来11年ぶりに増加に転じたことからもうかがえる。直接的な感染死もさることながら、間接的な“経済死”もまた大きな脅威として我々の前に立ちふさがっている。

◆緊急事態宣言に効果なし。論文で明かされた驚愕の実態

GoToやひいては東京五輪開催に漕ぎ着けたい菅政権がやむなく緊急事態宣言を延長するのは、自粛要請によって人の流れを減らせば感染拡大を防げるという思惑からだろう。だが、この前提が間違っているとすればどうか。医師で医療ジャーナリストの森田洋之氏が語る。

「ロックダウンや自粛要請は世界中で行われており、どれほど効果があるのか研究がなされ、論文などで実態が徐々に明らかになってきています。

結論から言えばその効果は限定的であり、特に日本では自粛要請と死亡率に相関はみられません。緯度や経度、その国のある場所や気候に左右されるもので、アジアでは人の流れを規制してもしなくても死亡率に影響が出ないと結論づけた論文も出ています。

つまり、今の日本にとって緊急事態宣言のメリットがあるかどうかは怪しく、逆に経済的なダメージを被るというデメリットは明らか。緊急事態宣言の延長は打ち切ったほうがよいと個人的には思っています」

◆旧型コロナと新型コロナは同じ推移を辿っている?

そもそも、気温が低く乾燥した時季にウイルスは活発化しやすく、かねてから冬の第3波が懸念されていた。旧型コロナ、いわゆる風邪の罹患者の推移を国立感染研究所「病原微生物研究情報」の’15年度から5年分をグラフ化したものと、新型コロナを突き合わせると、概ね同じ推移を辿っているようにも見える。

「季節性の感冒や流行性の感染症というのは1月中旬から2月の頭くらいがピーク、というのが例年の傾向。旧型コロナの月ごとの推移は、新型コロナにもほぼ当てはまります。

実効再生産数(1人の陽性者が新たに何人に感染させるかを表す数値)を見ても緊急事態宣言を発令した1月7日は1.18で、ピークは1月11日の1.54。その後は下がっており、1月29日で0.77です。発令から4日でピークを迎えるというのはいくらなんでも早すぎますし、このまま0.7以下で推移していけば感染者は指数関数的に減っていきますので、収束も早い。

日本はすでに第3波のピークアウトしていると思いますよ。テレビでは朝から晩までコロナの恐怖を煽っていて、正直、医師である自分も気持ちが持っていかれそうになりますが、こんなときこそ冷静にファクトで判断しながら対策を練るべき」

◆世論はより厳しい自粛を求め、人々が互いに監視しあっている

そもそも、緊急事態宣言の解除について政府分科会の尾身茂会長は「ステージ3(感染者が増加し、医療体制への負荷が一層かかった状態。4段階中上から2番め)に下がること」と言及していた。

それが現実味を帯びてきた今、解除の議論があってもよさそうなものだが、世論はより厳しい自粛を求め、人々が互いに監視しあっているように見える。

「事実よりも社会の雰囲気でコロナ対策が決められるのは非常に危うい。テレビは恐怖を煽るのではなく、先に僕が触れたロックダウンと死亡率の相関についての論文などを報じてほしい。やらないでしょうけどね。感染拡大を防ぐために間違った手段をとって自殺者を増加させるなんてナンセンス以外の何ものでもない」

果たして緊急事態宣言をいつまで続けるのか。菅政権には出口戦略の見直しが求められる。

◆緊急事態宣言を逆手にとった飲食店が大繁盛

夜の街・歌舞伎町や六本木では一部の高級店が自粛要請に従わず営業しており、予約を入れないと入店できないほどの盛況ぶり。20時以降もあいているため重宝されている。

朝5時までオープンしている店も確認できただけで6軒あり、そのうちの一軒に連絡してみると、23時の時点で満席だった

<取材・文/週刊SPA!編集部>
※週刊SPA!2/2発売号より