自転車乗車中に河川や水路に転落して死亡する事故が奈良県内で相次いでいる。現場を訪ねると、いずれも転落を防ぐための柵や蓋(ふた)などが設置されておらず、周辺の注意喚起も十分になされていない実態が明らかになった。自治体などが対策を急ぐが、直接的な転落防止につなげるには課題もあるようだ。県警は不慮の事故を防ごうと、注意を呼びかけている。【小宅洋介、林みづき】
2020年12月6日午前0時ごろ、奈良市六条2の乾川(幅約5・3メートル、深さ約3・5メートル、水深約7センチ)で、自転車に乗っていた市内の男性(当時72歳)が誤って転落し、死亡する事故が起きた。11月22日午前4時10分ごろには、天理市小田中町の珊瑚珠(さんごじゅ)川(幅約2・1メートル、深さ約1・5メートル、水深約25センチ)の中で、近くに住む男性(同58歳)が自転車と一緒に倒れているのが見つかった。いずれも死因は窒息死だった。
県警交通企画課によると、20年の交通死亡事故で最も多かったのが「自転車乗車時の事故」で、死亡した6人中5人が「河川・水路への転落」によるものだった。過去6年間に同様の事故で亡くなった人は計14人に上る。20年に5人が亡くなった河川・水路には、いずれも転落を防止する蓋や柵が設置されていなかった。
こうした安全対策が進まないのには理由がある。乾川を管理する県奈良土木事務所によると、事故が起きた川の横の道は、水防活動や河川点検時に利用される「河川管理用通路」にあたる。近隣住民が日常的に利用しているものの、道路法上の「道路」とは区別されるため、柵やガードレールなどが設置されていないという。一方、珊瑚珠川は農業用水としても利用されており、川沿いの道を管理する天理市によると、堆積(たいせき)土の撤去や農繁期前の草刈りなど、川の維持管理に支障があるため、柵や蓋を設置できないという。
県警によると、5人が亡くなった河川・水路に関して、注意を促す看板や路面に埋め込む目印「道路鋲(びょう)」を設置するなど間接的な対策を講じた自治体もあるが、いずれもガードレールや蓋の設置といった直接的な転落防止策を進めるには至っていない。担当者は「まずはこうした事故が起きていることを知ってもらい、自転車の安全運転を心がけてほしい」と話している。