独自にファクトチェック!政府側の答弁には「深刻な問題」が複数見つかった

【 立岩陽一郎 ファクトチェック・ニッポン!】

蓮舫議員(立憲民主)の質問に菅総理が「失礼じゃないでしょうか」と言ったことが注目された国会だが、不可思議としか言いようのない補正予算を成立させて序盤戦を終了した。

■記者サロンでファクトチェック

1月30日、朝日新聞・国会キャップの南彰記者、「ご飯論法」の命名で知られる法政大学の上西充子教授と私とでファクトチェックを行った。朝日新聞が新たに始めたオンラインでのセミナー「記者サロン」の一環だ。ファクトチェックは、政策の是非は議論しない。今回も政治家の発言について事実関係を確認した。その結果、政府側の答弁にいくつか深刻な問題が見つかった。

まず南記者が代表質問での菅総理の答弁を、歴代総理との違いで示した。答弁時間は3時間45分。文字数で見ると約6万6000字。これは時間比で2020年1月の安倍総理を1時間以上下回り、字数で見ると12年1月の野田総理の11万7000字の半分程度でしかない。蓮舫議員の質問のきっかけとなった菅総理の言葉足らずは、国会の冒頭で既にその姿を現していたことがわかる。

次に、感染症法改正案での罰則についての議論を見た。菅総理は入院勧告に従わない感染者への懲役刑は、全国知事会からの要望を受けたものと答弁した。しかし実際には、全国知事会は罰則こそ求めたが懲役刑までは求めていない。巧妙なのは、質問した小川淳也議員(立憲民主)が懲役刑について質問したのに対して、菅総理は「知事会からも罰則の創設を求める緊急提言もいただいています」と答えている。まさに「ご飯論法」だ。菅総理は誤ったことを言っていないが、質問と合わせることで、「懲役刑を求めたのは全国知事会」という誤った情報を拡散させるものとなっていた。

この罰則については、田村厚労大臣の発言もチェックした。田村大臣は、改正案作成にあたって開かれた厚労省の審議会での議論を問われ、「(賛成、反対の)両方ご意見がありました。しかしおおむね賛成」だったと答弁。しかし事実は全く違った。反対の声が圧倒的に多く、「おおむね賛成」という状況ではなかった。これは虚偽に近いとの意見で一致した。私権を制限する法律を作る際にその前提となる情報で政府が事実と異なる内容を示すという由々しき事態が起きていたということだ。

大臣のツイートもチェックの対象とした。河野大臣がワクチン接種に関してNHKが報じたワクチンのスケジュールを「デタラメ」と発信したものだ。しかしこれは政府が示したスケジュールをNHKが報じたもので、「デタラメ」とは言えない。実際には政府内に混乱があったことも後に判明している。こうした発信はメディアを敵視する空気を社会につくる恐れもあり注意が必要だ。

この「記者サロン」は朝日新聞がオンラインを使って新たに始めた取り組みだ。参加視聴者からも意見や質問を出してもらい双方向で議論を進める。参加者からは、「桜を見る会」についての安倍前総理、日本学術会議をめぐる菅総理の答弁を検証するよう求める声が聞かれた。国会をチェックすることの重要性を再認識する機会となった。

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(立岩陽一郎/ジャーナリスト)