東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が12日、女性
蔑視
( べっし ) と受け取れる不適切な発言の責任を取って辞任する意向を表明した。大会関係者からは発言への批判とともに、今後への影響を懸念する声が相次いだ。
「今後、会長職がどのように決まるか、世界から大変注目されている。手続きの透明性なども世界が見ているということだ」。東京都の小池知事は12日の定例記者会見で、後任会長の選定には透明性の確保が必要だとの考えを強調した。また、「会長職は女性でも就ける立場だと考えるか」と問われると、小池知事は「日本独特の質問だと思う。女性か男性かではなく、多様性と調和を実現するために、どういうリーダーが必要なのかが問われている」と応じていた。
駅などを案内する「都市ボランティア」などの辞退が相次いでいることも問われ、小池知事は「東京大会をレガシー(遺産)を残せる大会にしたい。ボランティアの皆さんに『もう一回一緒にやりましょうよ』と私からもお願いしたい」と復帰を呼びかけた。
一方、後継会長への就任が取り沙汰されていた川淵三郎・日本サッカー協会相談役が、就任を辞退する意向を表明したことには、都庁内でも驚きの声が相次いだ。ある幹部は「森さんの代わりなど簡単に見つかるものではない。本当に近日中に決まるのか」と困惑。別の幹部は「いったい誰ならば会長が務まるのか、教えてほしいぐらいだ」とため息をついた。
五輪まで5か月余りの時期に、組織委トップが辞任するという異例の事態を、競技会場がある自治体の首長も重く受け止めている。
新国立競技場を抱える新宿区の吉住健一区長は「もともと五輪開催に否定的だった人たちが、今回の一件を中止論と結びつけて考えるようになるのではないかと心配だ」と述べた。テニスや水泳など10会場がある江東区の山崎孝明区長は「大会開催に向け、これまで導いてきてくれた森さんが辞意を表明したのはとても残念」と語った。
聖火リレーのランナーも、森氏の発言と後継指名を批判する。障害者のランニングを支援するNPO法人「アキレスインターナショナルジャパン」理事長で、足立区内で走ることが決まっていた重田雅敏さん(68)は「差別がいけないことは、男女であれ、障害者であれ同じこと。そのことを最高責任者が自覚していなかったことに、がっかりした」と落胆。
新体操の代表選手やコーチ、監督として5回の五輪を経験した東京女子体育大学(国立市)教授で、立川市のランナーを務める予定の秋山エリカさん(56)は「立場のある方で、あの発言はあってはならない不適切なものだった」とし、森氏が川淵氏に後継会長の就任要請をしたことについても、「森さんが選んではいけない。正式な形で選ぶべきだ」と指摘した。