排水弁を閉め忘れ「300万円賠償」、職員負担で良いの? 教員のプール水流出でも多発

さすがにこの金額だと、水に流せないのかーー。職員のミスで水漏れが1カ月続き、兵庫県庁の水道代が約600万円も余計にかかったことが話題になっている。 報道によると、水漏れが起きたのは県庁地下にある受水槽。2019年10月に業者が掃除をした際、一緒にいた50代の県職員が「自分が閉める」と言ったにもかかわらず、排水弁を閉め忘れてしまったそうだ。 神戸市水道局が指摘するまでの1カ月間、水は流れ続けたという。 県庁は職員に対し、約300万円の賠償を求め、すでに支払い済みだという。残りの半分は県が負担することになる。この職員は「訓戒」の処分(規律違反を注意するものだが懲戒処分ではない)も受けている。 ●プールの水では賠償多数 公務員のミスで水漏れが起こることは珍しくない。代表的なのは、学校プールの水が流しっぱなしになるケースだ。 たとえば、千葉市の小学校で2015年にあった給水栓の閉め忘れでは、約438万円の損害が発生。校長、教頭、ミスをした教諭の3人が全額を返済した。 ただ、「全額」は珍しいようだ。2015年に起きた都立高校プールの水栓閉め忘れをめぐる住民監査請求に関し、教育庁は次のように回答している。 「(都内の自治体では)判例や顧問弁護士との協議により、プール水の流失事故において25%から75%までの割合で損害賠償請求を行っているとの情報提供を受けている」 実際、このとき問題になったケースでは、状況なども踏まえて、ミスした教員の負担は、損害額の半分に当たる58万円だった。 ●ミスしたら労働者から 業務中のミスで発生した損害について、使用者が労働者(被用者)に対して賠償を求められる(=求償)のかという点では、「茨石事件(最高裁昭和51年7月8日第一小法廷判決)」という有名な判例がある。 タンクローリーで衝突事故を起こした運転手に、働いていた会社が損害賠償を求めた事件だ。 この中で最高裁は、事業の規模や性格、業務内容や労働条件などの諸事情に照らしたうえで、「信義則上相当と認められる限度」で請求が認められるとしている。 ただし、実務上は求償が認められるケースはそんなに多くはない。たとえば、居酒屋店員が店の皿を割ったなどというレベルでは、賠償の必要はないと考えられる。 この判例は民間のケースではあるが、公務員にも概ね同様の基準が適用できると考えられている(cf.最高裁平成29年9月15日第二小法廷判決)。 なお、民間と公務員では違いもある。行政法の研究者でもある平裕介弁護士は、「公務員の場合は、軽過失だと求償権が条文上否定されています」と説明する。
さすがにこの金額だと、水に流せないのかーー。職員のミスで水漏れが1カ月続き、兵庫県庁の水道代が約600万円も余計にかかったことが話題になっている。
報道によると、水漏れが起きたのは県庁地下にある受水槽。2019年10月に業者が掃除をした際、一緒にいた50代の県職員が「自分が閉める」と言ったにもかかわらず、排水弁を閉め忘れてしまったそうだ。
神戸市水道局が指摘するまでの1カ月間、水は流れ続けたという。
県庁は職員に対し、約300万円の賠償を求め、すでに支払い済みだという。残りの半分は県が負担することになる。この職員は「訓戒」の処分(規律違反を注意するものだが懲戒処分ではない)も受けている。
公務員のミスで水漏れが起こることは珍しくない。代表的なのは、学校プールの水が流しっぱなしになるケースだ。
たとえば、千葉市の小学校で2015年にあった給水栓の閉め忘れでは、約438万円の損害が発生。校長、教頭、ミスをした教諭の3人が全額を返済した。
ただ、「全額」は珍しいようだ。2015年に起きた都立高校プールの水栓閉め忘れをめぐる住民監査請求に関し、教育庁は次のように回答している。
「(都内の自治体では)判例や顧問弁護士との協議により、プール水の流失事故において25%から75%までの割合で損害賠償請求を行っているとの情報提供を受けている」
実際、このとき問題になったケースでは、状況なども踏まえて、ミスした教員の負担は、損害額の半分に当たる58万円だった。
業務中のミスで発生した損害について、使用者が労働者(被用者)に対して賠償を求められる(=求償)のかという点では、「茨石事件(最高裁昭和51年7月8日第一小法廷判決)」という有名な判例がある。
タンクローリーで衝突事故を起こした運転手に、働いていた会社が損害賠償を求めた事件だ。
この中で最高裁は、事業の規模や性格、業務内容や労働条件などの諸事情に照らしたうえで、「信義則上相当と認められる限度」で請求が認められるとしている。
ただし、実務上は求償が認められるケースはそんなに多くはない。たとえば、居酒屋店員が店の皿を割ったなどというレベルでは、賠償の必要はないと考えられる。
この判例は民間のケースではあるが、公務員にも概ね同様の基準が適用できると考えられている(cf.最高裁平成29年9月15日第二小法廷判決)。
なお、民間と公務員では違いもある。行政法の研究者でもある平裕介弁護士は、「公務員の場合は、軽過失だと求償権が条文上否定されています」と説明する。