【突破する日本】韓国による森氏発言の悪用阻止せよ 慰安婦判決確定で日本政府の資産差し押さえ焦点、利用しない手はない

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、自らの発言で辞任表明した。後任会長が決まらず、現在も混迷が続いている。この問題は単なる「女性蔑視」や「女性差別」ではない。海外からは、ホロコースト(ユダヤ人絶滅政策・大量虐殺)や、ジェノサイド(集団殺害)を肯定したのと同様に受け止められている。
この文脈からは、今後、慰安婦問題と結び付けられるはずだ。このような発言を許容する国だから慰安婦を性奴隷としてきた-というわけだ。
韓国のソウル中央地裁は1月8日、元慰安婦らの訴えに対し、日本政府に賠償を命ずる判決を出した。判決は、国家には他国の裁判権が及ばないとする国際法上の「主権免除の原則」に違反するが、慰安婦問題を「計画的、組織的に行われた犯罪行為」と認定し、主権免除は適用されないとした。主権免除否定の理屈は理解できない。感情が先だったものだろう。
日本政府は訴訟自体に応じておらず、同月23日、判決は確定した。今後は、日本政府の韓国内資産の差し押さえが焦点となる。韓国はしばらくこの問題で熱狂するはずだ。その際、森発言を利用しない手はない。すでに、その兆候は見られる。
慰安婦問題については、米ハーバード大学のJ・マーク・ラムザイヤー教授が3月刊行の『インターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス』誌65巻に「太平洋戦争における性サービスの契約」と題する学術論文を発表した。産経新聞1月31日紙面に、青山学院大学の福井義高教授による解説・要約が掲載されている。
ラムザイヤー教授は「慰安所は当時の日本や朝鮮にあった公認の売春宿の海外軍隊バージョンであった」とし、慰安婦は報酬でも厚遇されており、日本軍に拉致され売春を強要された「性奴隷」でないと明らかにした。
また、「問題は、数十年にわたり女性を売春宿で働くようたぶらかしてきた朝鮮内の募集業者にあった」として、当時の韓国の民間業者の問題が日本の軍や政府に責任転嫁されていると明らかにしている。ソウル中央地裁の判決がいかに荒唐無稽であるかが分かる。
韓国では公共放送のKBSが「日本の右翼と同じ主張が盛り込まれている」「教授は、太平洋戦争中に韓半島出身者を強制的に働かせた『戦犯企業』とされる三菱の支援を受けている碩座(せきざ)教授(=寄付金で研究活動をする教授)で、日本政府から『旭日中綬章』を授与されている」(2月8日)などと感情的な反発をしている。
日本政府は、森氏の発言が悪用されないよう対策を考えておく必要があろう。
■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院法学研究科修士課程修了、政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。皇室法制、家族法制にも詳しい。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学国際学部教授。内閣官房・教育再生実行会議有識者委員、山本七平賞選考委員など。法制審議会民法(相続関係)部会委員も務めた。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)、『公教育再生』(PHP研究所)、『明治憲法の思想』(PHP新書)など多数。