家庭のトイレと言えば洋式が一般的になったが、今なお全国の小中学校のトイレでは約半数で和式が残る。昨年9月に文部科学省が発表した全国の公立小中学校にある洋式トイレの割合は57%。「子どもたちが慣れない和式で用を足せずに困っている」という声もあり、近年は衛生面や新型コロナウイルスを含む感染症対策の面からも洋式化が求められている。【井手千夏】
富山は洋式化率全国トップ
文科省の調査では洋式化率は北陸3県でみると、富山県が全国トップの79.3%のほか、石川県55.8%▽福井県57.7%。県庁所在地では富山市が94.1%であるのに対して、福井市は51.8%、金沢市は41.9%と全国の中で下位にとどまる。石川県内でも、野々市市84.9%▽中能登町79・5%▽七尾市46.4%▽宝達志水町45.7%――という「格差」がある。
TOTO(北九州市)によると、トイレの出荷台数の99.3%(15年)を洋式が占めるなどトイレ=洋式の構図は近年揺るがない。文科省は子どもが洋式に慣れていることや、災害時に避難所になる学校の特性も踏まえたバリアフリーの観点から洋式化を推奨。さらに、和式は便器外に飛沫(ひまつ)が飛び散りやすく雑菌が繁殖したり、洋式のふたを閉めて流したりすると感染症予防に効果的だとしている。
特に低学年の児童にとって、慣れない和式の存在は大きなストレスになる可能性がある。トイレ問題に関心を寄せる金沢市の小林誠議員によると、休み時間に限られた洋式に子どもが集中するために、用を済ませられなかった子どもが授業中に失禁してしまうケースがあると校長から声が寄せられている。
自治体ごとの差が生じる背景にはどんな事情があるのか。
全国でも上位に入る富山市は、16年の前回調査から48.6ポイント上昇。その「秘密」は便器自体の交換を優先して進めてきたことにある。学校の個室トイレは内開きが多く、和式から洋式に変えた便器がドアに引っかかってしまうこともあるが、富山市では便器を斜めに設置にしたり、ドアを外開きにしたりするなどしている。費用は1ブースにつき、工事代を含め50万~100万円以内で済むという。
一方、金沢市は16年の29.5%から12.4ポイント増にとどまる。市教育委員会は、市内の学校が多いことに加え、エアコン設置など複数の課題を抱える中で「優先順位を決めて取り組んでいる」と説明する。古い学校が多く配管工事も必要なことなどから、富山市のような便器交換ではなく、トイレ全体の改修工事を念頭に置く。その分、工事は長期に及ぶ上、縦1列につながる1~3階のトイレの改修には約5000万円かかるという。
20年12月の市議会で全面洋式化のめどについて問われた山野之義市長は「できるだけ早く達成すべく整備計画の策定と実現に取り組む」と応じた。市では今夏に全ての小中学校の普通教室のエアコン設置が終わるとし、担当者は「新型コロナを機にさらに洋式化を進めたい」と話す。
自治体による洋式化を後押しするため、文科省は01年に改修費の3分の1を補助する制度を設けている。その効果もあって、洋式化率の全国平均は16年の43.3%から20年に57%へと増加した。
NPO法人「日本トイレ研究所」(東京)の加藤篤代表理事は洋式化の重要性を挙げた上で、「和式を好む人のために一定の数の和式を残したり、介助が必要な人やトランスジェンダーのために男女共同トイレを整備したりするなど、選べるということが大事だ」と指摘している。