年金給付水準 2割弱目減り 厚生年金「所得代替率」28年後の見通し

厚生労働省は27日、公的年金の給付水準の見通しを示す財政検証結果を公表した。年金の伸びを低く抑える今の措置を続けた場合、6通りの経済前提の中間的なケースでみると、現役男性の手取り収入と比べたモデル世帯の厚生年金の給付水準(所得代替率)は、2019年度の61・7%から28年後の47年度には50.8%まで低下。2割近く目減りする見通しが示された。
同日あった社会保障審議会年金部会(厚労相の諮問機関)で明らかにした。検証は年金財政の健全性を確認するため5年に1度実施。将来世代の給付を確保するのを目的に年金の伸びを抑制する措置(マクロ経済スライド)が導入されており、給付水準は長期的に下がることが決まっている。
検証では、40年間平均的な収入で会社勤めした夫と専業主婦の妻を「モデル世帯」と設定。年金をもらい始める時期(65歳)の給付水準が、現役世代の収入と比べて将来も50%超を確保できるかをみた。5年以内に50%を下回ることが見込まれる場合、負担や給付のあり方などを検討することが法令で決まっている。
19年度のモデル世帯の年金額は厚生年金と基礎年金の合計で月22万円。現役の平均手取り月額は35万7000円で給付水準は61.7%だった。公的年金では、人口や経済動向が将来の給付水準を左右することから、「経済成長と労働参加が進む」ケースや、マイナス成長を含む計6通りについて将来推計した。
上位3ケースは長期的に50%を維持できるとしたが、下位3ケースは43~44年度以降、50%を割り込む。最悪のケースでは36~38%まで落ち込む。
6通りの経済前提のうち中間的な「ケース③」=図=では、47年度に受け取り始める時は50.8%となり、それ以降は下げ止まる。その時点で現役の平均手取りは月47万2000円(19年度の物価に換算)。年金額は24万円(同)で見かけは19年度より9%増えるが、現役の賃金の伸び(32%増)に届かない。
国民年金だけの世帯は厚生年金より減り幅が大きい。19年度の給付水準は36・4%だが、47年度は26・2%で、3割も目減りする。
厚労省は14年検証の際は6月上旬に公表。今年は老後資金「2000万円問題」が批判され、政府・与党は7月の参院選への影響を懸念。最終的に約3カ月遅れの公表となった。政府は、今回の検証結果を踏まえて制度改革に着手。来年の通常国会に関連法案を提出する。【横田愛】