新型コロナウイルス感染拡大に伴い10都府県に出されている緊急事態宣言は6府県の月内解除が決まり、政府が先行解除に慎重だった福岡県も対象になった。ただし、飲食店への営業時間短縮要請は1時間緩和した上で継続され、各企業も当面は飲み会や出張の自粛を続けるとみられる。苦境にあえぐ飲食店やホテル業界の復活は容易ではない。
宣言解除決定を受け福岡県は26日、現在午後8時まで(アルコール提供は同7時まで)としている飲食店の時短要請を午後9時まで(同8時半まで)に緩和して3月7日まで継続する一方で、1店舗当たり1日6万円の協力金を4万円に減額すると決定。服部誠太郎副知事は対策本部会議で「宣言対象から外れたとはいえ、決して気を緩めることはできない」と強調した。
飲食店は宣言解除にひとまず胸をなで下ろす一方、不安も抱えたままだ。「前回の宣言解除直後は反動で客足が1・5倍に増えたが、感染の『第2波』でまた打撃を受けた。今回も一時的には良くなるだろうが『第4波』が来る恐れは否定できない」。福岡市早良(さわら)区曙(あけぼの)2の焼き鳥居酒屋「押忍(おす)冬月(とうげつ)」のオーナー、古川綾乃さん(31)は語る。
宣言中は時短要請に従った上で、午前0時までテークアウトと宅配サービスを続けてきたが、売り上げは本来の半分ほど。この日も近所の常連客ら6人を迎えただけで、午後8時に閉店した。福岡県の宣言解除がぎりぎりで決まったことについても「アルバイトや予約などすぐには対応できない。もっと早く決めてほしかった」とこぼした。
企業などは自粛していた懇親会や接待の解禁に慎重だ。ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)は昨年末以降、社員同士の懇親会はもちろん、社内の食堂での会話も原則禁止している。広報担当者は「制限を緩めるにしても世の中の動きを見ながらになるのでは」。九州電力(同)の広報担当者も「飲食店を利用して地元経済の活性化に協力したいが、宣言が明けてすぐというのは難しいのではないか」と打ち明ける。
こうした社会の雰囲気には飲食店側も敏感だ。早良区西新(にしじん)の居酒屋の男性店主(52)は「閉店時間が1時間延びるのは大きいが、客足が元に戻る見通しは立たない」。店の改装費の返済や家賃、人件費などをまかなうには1日14万円以上の売り上げが必要だが、例年の3分の1以下に落ち込んでおり、1日6万円の協力金があっても足りない。協力金が4万円に減ると知り「宣言はこれで最後にしてほしい」と訴える。
ホテル業界でも宣言解除に期待と不安が入り交じる。福岡市博多区のビジネスホテルは宣言中の宿泊者数が全室の3割程度で、3月の予約は例年の1割ほど。経営者の男性(60)は「宣言は解除した方が良いが、感染の『リバウンド』も不安」と表情を曇らせる。
九州経済調査協会(福岡市)によると、福岡県内の宿泊施設の稼働状況を示す1月の指数は20・1で、宣言前の前月より11・8ポイント悪化した。同協会は「GoToトラベルの再開の有無が宿泊需要回復の鍵になる。また、東京などからの出張需要やインバウンドの回復がなければ元通りの水準となるのは難しく、当面は先行きが見通せない状況だ」と話した。【吉川雄策、高橋慶浩、平川昌範】
病床使用率なお高く 花見など人出警戒
緊急事態宣言が解除されても、新型コロナウイルス対策で期待されるワクチンの一般向け接種が始まるのは4月以降になる見通しだ。一方で例年ならば歓送迎会や花見などで人が集まる機会の多い季節を前に、医療関係者は再拡大への警戒感を示す。
昨春の「第1波」は、3月下旬から感染者数が増加したが、大学生の卒業旅行や職場内の送別会などでクラスター(感染者集団)が相次ぎ発生したことも一因だった。福岡大(福岡市城南区)は25日、謝恩会や卒業旅行の自粛を求める学生向けのメッセージをホームページに掲載。福岡県の服部誠太郎副知事も26日の記者会見で「卒業旅行や謝恩会、歓送迎会は控え、お花見は宴会なしで楽しんでほしい」と県民に呼びかけた。
政府は今回、福岡県への宣言解除について慎重だった。県が宣言解除を要請する独自判断基準の一つ、最大確保病床の使用率が基準(50%未満)を満たしたとはいえ、25日時点で42・1%と依然高い状況にあるからだ。福岡県医師会で感染症を担当する稲光毅常任理事は「宣言が解除されるからといって感染リスクが下がるわけではなく、誰もが感染しうる状況は変わらない。引き続き感染対策をお願いしたい」とくぎを刺した。【青木絵美】