「ママ友」に生活を支配されていた。福岡県で5歳男児が餓死した事件について、にわかには信じがたい内容が報道されている。 読売新聞(3月2日)によると、当時5歳の男児にご飯を与えず餓死させたとして、母親(39)と知人の女性(48)が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。 5年ほど前に子どもが通う幼稚園の「ママ友」として知り合った2人だったが、母親は次第に女性の指示通りに行動するようになったという。 不可解なことも多いこの事件。ネットでは「餓死させるのも殺人だ」という声も上がっているが、今後容疑が殺人に変わる可能性はあるのだろうか。神尾尊礼弁護士に聞いた。 ●線引きはかなり難しい 幼い子どもの命が失われる虐待事件が起きました。容疑が殺人になる可能性はあるのでしょうか。 裁判例上も、保護責任者遺棄致死罪と殺人罪の区別が問題になることがあります。基本的な考え方としては、殺意があれば殺人罪、殺意がなければ保護責任者遺棄致死罪になります。 ただ、いわゆるネグレクト事案では「十分なケアを与えなかった」ことが問題になります。「すべきことをしなかった」という外見が同じで、「殺意があったかどうか」という内面によってのみ区別されることになるわけですから、線引きはかなり難しくなります。 では、何が決め手になるのでしょうか。 私の経験上、大きく分けて2つの要素が決め手となるように思います。 (1)検察官の起訴がどちらの罪名か 日本では、検察官の起訴罪名を判決で超えることは原則として許されていません。 したがって、検察官が保護責任者遺棄致死罪で起訴した場合、裁判所が殺人罪もあり得ると判断したとしても、勝手に殺人罪の判決を下すことは許されません。そして、保護責任者遺棄致死罪で起訴されているのであれば、殺意に関する審理が行われることはまずありません。 他方、殺人罪で起訴された場合、殺意を争ったとしても多くの事案で殺人罪が認定されてきています。 このように、(元も子もないですが)検察官がどちらの罪名で起訴するかでおおよそ決まってくるのではないかというのが1つ目の経験知です。 (2)日頃から虐待行為があったか 検察官の起訴をみていると、日頃から虐待行為があったかどうかを重視しているように思います。 身体に傷があるなど虐待があったと思われる場合には殺人罪(傷害致死罪を含む)で起訴する傾向にあり、傷がないかあっても程度が軽い、あるいは因果関係がよく分からない場合には保護責任者遺棄致死罪で起訴する傾向にあるように思います。
「ママ友」に生活を支配されていた。福岡県で5歳男児が餓死した事件について、にわかには信じがたい内容が報道されている。
読売新聞(3月2日)によると、当時5歳の男児にご飯を与えず餓死させたとして、母親(39)と知人の女性(48)が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。
5年ほど前に子どもが通う幼稚園の「ママ友」として知り合った2人だったが、母親は次第に女性の指示通りに行動するようになったという。
不可解なことも多いこの事件。ネットでは「餓死させるのも殺人だ」という声も上がっているが、今後容疑が殺人に変わる可能性はあるのだろうか。神尾尊礼弁護士に聞いた。
幼い子どもの命が失われる虐待事件が起きました。容疑が殺人になる可能性はあるのでしょうか。
裁判例上も、保護責任者遺棄致死罪と殺人罪の区別が問題になることがあります。基本的な考え方としては、殺意があれば殺人罪、殺意がなければ保護責任者遺棄致死罪になります。
ただ、いわゆるネグレクト事案では「十分なケアを与えなかった」ことが問題になります。「すべきことをしなかった」という外見が同じで、「殺意があったかどうか」という内面によってのみ区別されることになるわけですから、線引きはかなり難しくなります。
では、何が決め手になるのでしょうか。
私の経験上、大きく分けて2つの要素が決め手となるように思います。
(1)検察官の起訴がどちらの罪名か
日本では、検察官の起訴罪名を判決で超えることは原則として許されていません。
したがって、検察官が保護責任者遺棄致死罪で起訴した場合、裁判所が殺人罪もあり得ると判断したとしても、勝手に殺人罪の判決を下すことは許されません。そして、保護責任者遺棄致死罪で起訴されているのであれば、殺意に関する審理が行われることはまずありません。
他方、殺人罪で起訴された場合、殺意を争ったとしても多くの事案で殺人罪が認定されてきています。
このように、(元も子もないですが)検察官がどちらの罪名で起訴するかでおおよそ決まってくるのではないかというのが1つ目の経験知です。
(2)日頃から虐待行為があったか
検察官の起訴をみていると、日頃から虐待行為があったかどうかを重視しているように思います。
身体に傷があるなど虐待があったと思われる場合には殺人罪(傷害致死罪を含む)で起訴する傾向にあり、傷がないかあっても程度が軽い、あるいは因果関係がよく分からない場合には保護責任者遺棄致死罪で起訴する傾向にあるように思います。