【被災地首長アンケート】復興の進捗、原発事故への思い…被災地首長はこう考える

東日本大震災で大きな被害があった岩手、宮城、福島3県の42市町村長を対象に産経新聞が実施したアンケートに対し、41市町村長から回答を得た。各自治体長から復興の進捗、震災、原発事故についての現在の考えを聞いた。(自由回答などを抜粋)
【岩手県】
水上信宏洋野町長
復興へのご支援により、今の本町の姿がある。感謝申し上げたい。徐々に再生可能エネルギーへの移行を国で主導してほしい。
遠藤譲一久慈市長
当市の復興はほぼ完了している。国内外からさまざまな支援をいただいたことに改めて深く感謝申し上げる。これからは再生可能エネルギー拡大への施策が重要。送電網の強化に対する国の積極的な取り組みが必要。

小田祐士野田村長
ハード事業はおおむね完了に近づいているが、心の復興、コミュニティーの再生には長い時間がかかる。

柾屋伸夫普代村長
原発処理水の海洋放出について安心安全の説明がなされていない。国において十分な説明をすべきだ。

石原弘田野畑村長
復興庁の存続を歓迎したい。福島の原発事故と復興への対応、岩手と宮城のハード事業への重点的な対応となる。原発問題は福島県の方々だけが悩み苦悩することなく、国民が等しく苦労を分かち合えるように、政府が責任をもって解決策を示すべきだ。
中居健一岩泉町長
被災者の心のケアなどソフト面での支援は引き続き行うが、長期に継続した対応が必要となる。
山本正徳宮古市長
国、県は被災地の実情に合わせ、心の復興が冠水するまで支援の継続を要望する。
佐藤信逸山田町長
復興の進捗は8段階。防集元地の未利用地の件、防潮堤が未完成。
平野公三大槌町長
市町村行政において不幸にして多くの犠牲者が出て、行政運営が麻痺状態になった場合、県または国が代行して事務を行う制度の創設。
野田武則釜石市長
来年度にはすべてのハード事業が完了となるが、被災者の心のケアやコミュニティー形成支援などが今後の課題となっており、解決に向け、最後まで被災地に寄り添いながら、被災自治体とともに取り組んでいただくことを期待したい。
戸羽太陸前高田市長
東日本大震災からの復興事業の考え方が結果としてどうだったのか、問題点はなかったのか、しっかりと検証し、改善すべきは改善し、次の災害に備えてほしい。
【宮城県】
菅原茂気仙沼市長
東京電力福島第1原発のトリチウムを含んだ処理水の海洋投棄について、漁業者の理解を前提としてほしい。

佐藤仁南三陸町長
制度に復興を合わせるのではなく、復興に制度を合わせるといった点については一定の評価をするが、不足と感じる点もあった。事前防災に力を入れるべきだ。
亀山紘石巻市長
大規模災害になればなるほどスピード感や公平な支援が求められる。被災者の生活再建については国や県の広域的な視点からのリーダーシップや判断が必要であり、制度設計が必要。
須田善明女川町長
「復興を通じて人口減少をはじめとする課題を抱え続ける将来の地方社会の一つの在り方を示す」ということをテーマの根底に置き、未来志向の復興まちづくりを指向してきた。“被災地であった”各地のこれからのチャレンジにこれまでとは違う文脈で関わっていただければと考える。
渥美巌東松島市長
被災地は人口減少が著し、原因の一つとして働く場所が少ないことが考えられ、被災地の企業誘致への支援を求めて生きたい。
桜井公一松島町長
東京電力福島第1原発事故の処理水については漁業関係者、広く国民に安全性が確保されているのか具体的な説明を行ってほしい。
熊谷大利府町長
住民の安全安心の確保のため、県は関係市町が策定している女川原発の現行の避難計画の妥当性について改めて検証、整理すべきだ。

佐藤光樹塩釜市長
原発事故は今もなお多くの住民が苦しんでいる。汚染水の対応、補償問題の解決なくして東京電力が信頼を勝ち取ることはできない。
寺沢薫七ケ浜町長
被災者の心の復興について国や県のソフト事業の支援を継続してほしい。
深谷晃祐多賀城市長
東京電力福島第1原発事故の国や東京電力の情報発信が震災当時より希薄化していると感じる。風評被害に苦しむ水産業関係者、周辺海域に属する都道府県、国民に対する十分な説明責任を負うべき。
郡和子仙台市長
東京電力福島第1原発事故のモニタリング業務などを現在も継続しており、国は事業者に任せることなく責任ある事故対応を要望する。
山田司郎名取市長
被災者の心のケアや被災地コミュニティー遺児、震災伝承事業に財政面をはじめ多面的な支援、援助をお願いしたい。
菊地啓夫岩沼市長
近年、自然災害が激甚化、頻発化する中、政府の国土強靭化政策について一層のスピード感と規模感を持った取り組みが推進されることを期待している。
山田周伸亘理町長
被災者へのソフト事業の継続。
斎藤俊夫山元町長
マンパワーの確保。特に専門的技術職。

【福島県】
大堀武新地町長
復興の進捗は8段階。処理水の問題が未解決であり、水産業は本格操業に至っていない。風評被害も弊害となっている。
立谷秀清相馬市長
放射線に関する農水産物の風評被害が深刻。誤った知識は、差別や偏見の要因となる。国民が正しい知識を身に着ける必要がある。
門馬和夫南相馬市長
復興の進捗は7段階。農業や商工業の再生、旧避難指示区域の小高区の生活環境の再生については鋭意進行中。

杉岡誠飯舘村長
復興の進捗は4段階。ふるさとを愛し、楽しみ、喜びをともにする「ふるさとの担い手」が主役でありプレーヤーでもある。ふるさとの再生・発展に取り組むことで復興を加速させ、持続的なものにする必要がある。
藤原一二川俣町長
10年という節目ではあるが、これから住民の本音に耳を傾けながら寄り添った政策を展開していかなければならない。
吉田数博浪江町長
現在も東京電力福島第1原発事故の影響は続いている。国から帰還困難区域の解除に向けた方針が示されていないために、避難されている町民の方々は将来設計ができない。早急に解除に向けた方針を時間軸を含め示してほしい。
篠木弘葛尾村長
復興事業の財源確保と長期的な財政支援。
伊沢史朗双葉町長
被災自治体といっても自治体の事情はそれぞれで、復興事業のステージが違うことをもっと発信してほしい。まだ全町避難の自治体があることや帰還に向けて人的支援や復興養蚕の確保の継続などが必要な自治体があることも発信してほしい。

吉田淳大熊町長
当町の復興は始まったばかり。10年を区切りとせず、復興の現状に応じた継続的な支援を今後も望む。
宮本皓一富岡町長
震災と原発事故の複合災害により全町避難というつらい経験をした。調印を再び避難させるようなことは決してあってはならない。安全、確実な廃炉作業、放射性廃棄物の県外搬出、適正な処分をお願いしたい。
本田仁一田村市長
持続的な町づくりには人口流出の抑制や定住促進は欠かせない。引き続き風評被害の解消、移住定住施策の推進を求める。個々の実情に合わせた柔軟な対応を期待する。
松本幸英楢葉町長
震災からの復興のため、新しい町づくりについて国や県から後押しをしていただきたい。
遠藤智広野町長
町民一人一人が納得して帰還する「幸せな帰町」をなしえるため、生活再建支援、医療福祉、教育の体制整備、故郷での安心安全な生活環境をととのえていかなければならない。
遠藤雄幸川内村長
既存制度を絶えず見直す姿勢と、自治体の現状をとらえた柔軟な財政支援。
清水敏男いわき市長
原発避難者の受け入れを行いつつ、津波被災地、原発被災地の両面の課題を抱えている。原発被災地を周辺自治体が支え、浜通り地域が向かうべき方向性を共有するためにも一体としてとらえた取り組みを進めていただきたい。