3月12日、「令和のM資金」裁判の第3回口頭弁論手続きが3カ月ぶりに東京地方裁判所の法廷で開かれた。
原告は、「大戸屋」「牛角」など数多くのブランドを擁する外食大手を一代で築いた株式会社コロワイド(神奈川県横浜市)代表取締役会長の蔵人金男氏である。
蔵人会長は、いわゆる「M資金」詐欺にひっかかった。2017年9月から18年12月まで、10回に分けて計31億5280万円もの大金を振り込み、民事裁判ではその返還を求めている。
昨年6月には3人が詐欺容疑で神奈川県警に逮捕され、現在、一名だけが起訴されている、この刑事裁判は3月末に横浜地裁で開かれる予定。
■曖昧な証拠という指摘も
このようにこの蔵人氏のM資金事件では刑事と民事の裁判が同時進行している。そのため民事訴訟を起こして裁判が始まったものの、原告被告ともに今後の刑事裁判で出てくる証拠を待つ状態になっている。
一方で裁判長は「民事でそれを待っているというわけにはいかない。刑事では(出て来た証拠を)補充していく」と原告側の尻を叩いている状態だが、原告側弁護士は「刑事と民事で言っていることがおかしいとなれば糾弾されることになり不本意です」と説明。
もっともでもある。しかし不可解なのは「客観的な証拠が出ていない」(裁判長)ということだ。
蔵人氏の弁護士は「どれくらい入金したかは本人から聞いている」とするが、被告側弁護士からは「(被告I)との日付と場所が曖昧だ。具体的でないと反論もできない」などとも指摘される始末。蔵人氏は裁判を起こしたのに相変わらず証拠が曖昧なのであり、クビをかしげる。
当日、裁判を傍聴していた記者は「本当に蔵人氏がお金を振り込んだのか、わからなくなってきました」と話した。一方、原告側弁護士は「蔵人氏とも話している。刑事事件との関係があるからであって、腰が引けているわけではない」と答えた。刑事裁判は少なくとも5任の証人尋問があり、数か月はかかるとされる。終盤では蔵人氏も法廷で証言する予定である。
M資金詐欺は騙された経営者が恥の上塗りになるためか滅多に裁判沙汰にならない。そのような中、堂々と告発をおこなった蔵人氏の動向を引き続き注目していきたい。
(取材・文=平井康嗣/日刊ゲンダイ)