リニア地下工事で川崎・相模原の住民に不安 駅工事周辺で振動・騒音の訴えも

神奈川県内のリニア中央新幹線の地下工事をめぐり、リニア沿線の住民から安全性を不安視する声が上がっている。道路の陥没が起きた東京都調布市の工事と同様のトンネル工事が行われるため、「相模原市でも陥没が起きてしまわないか」という懸念があるからだ。一方、リニア新駅「神奈川県駅(仮称)」の建設が進む地域の住民は、工事による振動や騒音被害も訴えている。リニア工事が本格化するのを前に、事業者らには安全対策と住民生活への影響を低減させることが求められている。(浅上あゆみ)
東京・品川-名古屋間を最速40分、品川-大阪間を最速67分でつなぐリニア中央新幹線。相模原市と川崎市を通る県内の約40キロの路線の大半は地下に建設される。停車駅はJR橋本駅(相模原市緑区)付近に建設中の新駅「神奈川県駅(仮称)」の1カ所だ。令和9年の開業を目指し、今後、工事が本格化する。
調布の陥没現場より浅く
現在、相模原市は一部の住民に対し、トンネル工事で地下を使用する権利の取得交渉を行っている。しかし、シールドマシンと呼ばれる大型掘削機による工事が原因で発生した調布の陥没をきっかけに、住民から「本当に安全なのか」といった疑問も聞かれるという。
シールドマシンは、地下鉄や下水道のトンネル工事などで広く使われている。相模原市内の一部の工事では、東京都町田市西部との境から相模川までの約5・4キロで、調布よりも地下の浅い部分をシールドマシンが通過する。
そのため、地下を使用する「区分地上権」を住民から取得する必要がある。相模原市は事業者のJR東海から用地取得事務を請け負っている。該当戸数は公表していないが、市職員が直接、説明と交渉に出向いている。市によると、調布の陥没から「工事を懸念する声が増えた」(市の担当者)という。
もともと、自然環境への影響などからリニア整備に反対する市民はいたものの、「調布と同じようになったら困る」「(異常が起きたら)補償はしてくれるのか」といった声が聞かれるようになった。市は権利の取得状況も明らかにしていないが、「あくまでも順調」としており、「工事の安全を事業者に求めている」と話した。
JRに要望書
川崎市でも、調布と同様の大深度地下トンネル工事が行われる。2月19日、神奈川県は川崎市と相模原市と連名でJR東海に、書面で要望書を提出した。要望書には「リニア沿線の住民は大変不安を抱えている」としたうえで、(1)工事着手前に十分な調査を行い、住民に工事内容を説明すること(2)工事中の安全確保の徹底(3)万が一、地表面に異常が認められた場合の原因究明や住民への説明-を要請した。
JR東海は県と2市からの要請を受け、産経新聞の取材に「(調布の陥没に関連して)NEXCO東日本の有識者委員会が年度内に出すとされている最終報告の内容を含め、工事の安全性に関するさまざまな情報を集める。必要な対策をきちんと講じ、工事を行うルート上にお住まいの方々にあらかじめ丁寧に説明したうえで、周囲の環境へ影響がないことを確認しながら進めていく」と回答した。
「夜も眠れない」
一方、令和元年11月に工事が開始された地下駅「神奈川県駅(仮称)」周辺地域では、すでに住民生活に影響が出ているという。トンネル工事は始まっていないものの、「リニア新幹線を考える相模原連絡会」には「工事の音がひどく、完成まで耐えられるか」などといった悲痛な声が寄せられている。
同連絡会は昨年11月~今年1月、新駅工事の周辺住民約1千人にアンケート用紙を配布。回答のあった67人の中には、騒音や振動を訴える声が多くみられたという。具体的には▽夜間工事の音で精神的に参ってしまう▽振動で頭痛がする▽ベランダの柵に土ぼこりが積もる▽調布のように地盤沈下が起きないか不安▽緑地が減るのが悲しい-などの声があった。
同連絡会代表の浅賀きみ江さんは「リニア工事を即刻中止にするべきだと言っているのではない」と話す。続けて「せめて行政や事業者には住民生活に影響が出ていることを把握してもらい、対策を考えてほしい」と訴え、事業者と相模原市に要望書を提出した。
日本の交通の新たな大動脈となることが期待されているリニア中央新幹線。リスクのない工事など存在しないが、より徹底した安全対策と住民生活への影響の軽減が求められる。