菅流の「改革」は仕事場から始まった。
菅義偉首相は就任後、首相官邸の執務室にあるテーブルのサイズを小さくするよう指示した。前任の安倍晋三首相時代から使っていたテーブルは、説明に訪れた官僚と菅の距離が遠く、資料を直接手渡すことも出来なかったためだ。
余分な時間は少しでも省きたい――。首相周辺は「実務家の菅さんらしい判断」と納得した。
「国民のために働く内閣」を掲げた菅は、就任直後から矢継ぎ早に政策課題に手を着けた。携帯電話料金の引き下げ、デジタル化、不妊治療の保険適用。ブレーンの一人、東洋大教授の竹中平蔵が説く「アーリー・スモール・サクセス」、小さくても早期の成功事例を重視する戦略だ。
「目玉」と位置付ける政策は、軌道に乗り始めている。携帯電話料金は、大手3社が割安な新プランを相次いで発表し、3月後半にスタートする。デジタル庁の9月設置を盛り込んだ関連法案は、国会での審議が始まった。不妊治療も2022年4月の保険適用に向け、制度設計が進む。
菅は若手議員の頃から、国民の多くが賛成し、変化を実感しやすい「身の回り」の個別政策実現に力を入れてきた。「ふるさと納税」が典型で、政府・与党内では「菅型民主主義」とも呼ばれる。
ただ、首相になった今、自民党内には物足りなさを感じる向きもある。
天皇誕生日で休日の2月23日昼、東京・赤坂の衆院議員宿舎。あるベテラン議員が、党幹事長の二階俊博を自室に招いた。2人の会話は、菅の政権運営に話題が及んだ。
「大きな構想がない。官房長官の延長でやっている感じがする」
昨年の総裁選で菅を支援したベテラン議員は、二階にこう不満を漏らした。それならと、二階は同じ宿舎に住む菅を電話で誘ったが、菅は都合がつかなかった。