文化芸術支援、1週間で不交付6000件! 笑いながら「対象外」と言い放った萩生田文科大臣の文化芸術への無関心ぶり

◆文化芸術への支援を訴えた3月15日の吉良よし子議員の質疑

当サイトでも以前取り上げた通り、第3次補正予算は計上されたものの、現場ニーズとあまりにかけ離れた制度設計となっている文化芸術支援。昨年2月26日に安倍晋三総理(当時)が最初にイベント自粛を呼びかけてから実に1年以上が経過。その間、ライブハウスの閉店やミニシアターの閉館は相次ぎ、芸術活動の継続自体を諦めるアーティストも続出している。

2021年3月15日の参議院予算委員会、この状況を以前から問題視していた共産党・吉良よし子議員は自民党・萩生田光一文科大臣を始めとする閣僚に対して、文化芸術の補償について約18分間にわたって質問。先月27日に自ら出演した #SaveOurSpace とChooseLifeProjectの共同企画であるオンライン番組「音楽の現場、もう限界です」で文化芸術関係者から聞いた窮状を国会で代弁した。

本記事では、この質疑の中で文化芸術活動の継続支援事業の審査中案件が焦点となり、わずか1週間で6000件が一気に不交付となっていた実態が明らかにされた約5分間の質疑をノーカットで信号機で直感的に視覚化していく。具体的には、信号機のように3色(青はOK、黄は注意、赤はダメ)で直感的に視覚化する。(※なお、色表示は配信先では表示されないため、発言段落の後に( )で表記している。色で確認する場合は本体サイトでご確認ください)

吉良よし子議員からの質問4問に対する萩生田大臣の回答を集計した結果、次のような結果になった。

<色別集計・結果>

●萩生田文科大臣(計335字):赤信号80% 青信号14% 灰色6%

*小数点以下を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはならない

萩生田文科大臣は赤信号が実に8割。つまり、質問された内容に全くと言って良いほど回答していない。いったいどのような質疑だったのかはこれから詳しく見ていく。

〈*記事中の動画リンクが表示されない配信先で読んでいる場合、動画は筆者のyoutubeチャンネル「赤黄青で国会ウォッチ」で視聴できます〉

◆8000件あったはずの文化芸術活動の継続支援事業の審査中案件はどうなった?

吉良よし子議員は文化芸術活動の継続支援事業の不交付と取り下げの多さを指摘しつつ、2021年2月末までに公演を行うことが支援条件にもかかわらず、期限を過ぎた3月に入っても審査中のままという異常な状況に陥っている件数を確認していく。その過程で、さらに異常な状況が浮き彫りになっていく。その質疑は以下の通り。(下記の動画リンクの0分10秒~)

吉良よし子(1問目):

『(文化芸術活動の継続支援事業の)不交付が1万2000件、そして取り下げが4600件なんですけども、2万件近くが支援が届いていない。これ取り下げたのは、『制度の対象にならないから』ではなくてですね、諦めたからなんですよ。一番の問題は交付までに時間がかかり過ぎるからなんです。

私のところにもですね、いつまでたっても連絡がなくて、交付されるかどうかわからないので事業をすること自体も諦めようとか、取り下げようとか、そんな相談が次々寄せられました。相談される方には、もうしばらく待ってくれと。言い続けて、励まし続けてきたんですけれども、「企画していた本番の日にもう間に合わないから」と、だからもう持ち出すわけにもいかないし、諦めてしまった方も出てきてしまった。本当に私も悔しい思いなんです。

今、3月になってですね、まだ交付決定できてない審査中の案件というのはあるんでしょうか。件数をお答えください。』

萩生田光一文科大臣:

『えー、現在17件が審査中となっております。(青信号)』

吉良よし子(2問目):

『これ、おかしな話なんです。先々週の3月5日時点では、8000件、審査案件があったんです。それが一週間でゼロに近くになった。17件になった。どういうことですか? 』

萩生田光一文科大臣:

『えー、文化庁においてはこれまで毎週金曜日の14時頃に実施事務局から交付決定の情報をメールで受けて、17時頃にホームページを更新してます。実施事務局でこれまでは14時の時点で各個人等への通知基準が・・、通知準備が整った状態であったため14時以降の報告を受けていましたが、今回は件数が多く、その後に不交付決定の通知準備が、あー、整ったため、各個人等に通知することとしましたが、文化庁への報告が遅れたことが原因と承知しております。(赤信号)』

萩生田大臣は審査中の件数を問われた1問目には回答しており、8000件あったはずの審査案件がわずか1週間で17件に激減したという驚くべき事実が明らかになる。繰り返しになるが、支援条件は2021年2月末までに公演を行うことである。つまり、もう公演を行うべき期限が過ぎた後、審査中だった約8000件がわずか17件を除いて突如として消えてしまったことを意味している。

この異常事態の詳細を問われた2問目については、萩生田大臣は以下のように論点をすり替えており、赤信号とした。

【質問】審査案件の激減理由

↓ すり替え

【回答】審査案件の結果通知遅れの理由

質問と回答がまるで噛み合っていないし、いったい何の話をしているのかさえも理解できない。

◆17件以外はどこに消えた?

先ほどの萩生田大臣の頓珍漢な答弁に対して、吉良よし子議員は審査案件が17件に激減した理由や、消えた8000件弱の案件がどうなってしまったのかを根気強く質問していく。その質疑は以下の通り。(下記の動画リンクの2分22秒~)

吉良よし子(3問目):

『そうじゃないです。8000件あったのが1週間で17件になった。7000件を一気に交付決定したってことですか?どうなったんですか?』

萩生田光一文科大臣:

『あの、先週段階まであった8000件については継続的にですね、交付の準備をしていたのが整ったということでございます。(赤信号)』

吉良よし子(4問目):

『17件以外は全部交付されたと。それでよろしいですか?』

*萩生田大臣は後ろに控えていた官僚に耳打ちされてから答弁に向かう

萩生田光一文科大臣:

『えっと、全て交付決定したんじゃなくて、8000件のうち、約6000件が交付決定してて、2000件は・・・ (赤信号)』

*後ろに控えていた官僚が萩生田大臣に声をかけて内容を訂正させる

萩生田光一文科大臣:

『逆? 2000件が交付決定していまして、6000件が、えー、対象外ということになると思います。(青信号)』

*萩生田大臣は数字が逆だったことについて、吹き出して笑いながら答弁

吉良よし子:

『要するに6000件、この1週間で一気に切り捨てたってことですよね。これはあまりに酷い話だと思うんですよ。連絡待ちながら一生懸命、慣れない申請作業していた文化芸術関係者の皆さんがね、心が折れながらも頑張ってたのに6000件、一気に不交付決定。もうそもそもね、この2月末までに何かやれと、そういうやり方がね、問題なんですよ。で、この期間内に新しい公演行うのが、どれだけ大変か。持ち出す資金のない若手のアーティストの皆さんは、もうすごい高いハードルで、それでも頑張って申請してみたけど交付決定がなかなか来ないから諦めるって、そういう悪循環になってるんですよ。申請すること自体できなかったって話も聞いています。』

質疑は以上である。

◆萩生田文科相は「6000件が対象外」と笑いながら言った

消えた8000件がどうなってしまったのかという問いに対して、最後にようやく2000件が交付決定して、6000件が不交付となったという回答が得られた。だが、そこに至るまでに3問目では8000件全てが交付されたかのような答弁を行い、4問目では「6000件が交付決定」という事実と真逆の答弁を行っている。いずれも萩生田大臣の認識誤りであり、赤信号とした。

このやり取りから見えてくることは、萩生田光一氏は文部科学大臣でありながら、一週間で6000件が一気に不交付にされたことを答弁中に初めて知ったということである。

萩生田大臣はこれまでの国会答弁でも度々、文化芸術への無関心さが垣間見えていた。例えば、約1ヶ月半前の1月28日の参議院予算委員会における共産党・小池晃議員とのやり取り。民間の寄付に頼っており、1000万円に到達した後で助成が開始される仕組みとなっている文化芸術復興創造基金について現時点の寄付額を質問された際、萩生田大臣は答弁時に手元の原稿を見て初めて金額を知ったことがはっきり分かる様子で答弁していた。具体的には、昨年11月時点で711万円だった寄付額が、2ヶ月経っても僅か50万円程度しか増えておらず、その少なさに思わず失笑しながら「766万円」と答弁。その様子は以下の下記の動画リンクの7分5秒からハッキリと確認できる。

今回の質疑でも「6000件が交付決定、2000件が不交付」と逆に答弁したことに気づいた際に見せた、吹き出すような笑い方とそっくりだ。

国会で萩生田文科大臣は聞こえの良い言葉で物腰柔らかに答弁しているが、1000万円を超えないと助成が開始されない文化芸術復興創造基金の寄付額を意識すらしておらず、文化芸術活動の継続支援事業が1週間で6000件も不交付決定されたことを国会質疑の場で初めて知り、その事実を笑って伝えることができるほどに、実際は文化芸術の支援に全くもって無関心であることが伺えたのである。

<文・図版作成/犬飼淳>

【犬飼淳】

TwitterID/@jun21101016

いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。