旭川医科大(北海道旭川市)の吉田晃敏学長の解任適否を審査している会議が、退任に同意していないメンバー2人を「意向どおり退任について了承された」とする議事要旨を作成していたことが分かった。2人は吉田学長に近いとされ、退任扱いの背景には新型コロナウイルスの急激な感染拡大に端を発した学内紛争があるとみられる。(寺田理恵)
■2委員が退任否定
今月8日に公開された吉田晃敏学長の解任審査会議の議事要旨は、学長に近いとされる委員4人が2月19日に退任したと記載されていた。ところが、関係者によると4人のうち2人が退任を否定しているという。
この議事の議長役を務めた松野丈夫理事は「この日の会議には2人の出席を求めておらず、事前に意思統一も図っていなかった。2人は退任していない」と誤りを認めている。
退任を否定している2人はその後の審査会議に招集されておらず、審査会議が規約上成立するか疑義があるとして、学内が混乱することになった。
大学側と病院の内紛が明るみに出たのは12月17日の週刊誌報道。新型コロナに感染した軽症患者の受け入れを求める当時の古川博之病院長に対し、吉田学長が「入院させるなら、病院長をやめてください」と拒否する場面が描写されていた。クラスターが発生した市内の病院を「なくなるしかない」とした吉田学長の音声も公開され、14年間トップに君臨してきた学長の権威は一気に失墜した。
■権威失墜、形勢逆転
審査会議の初会合は1月18日に招集され、当初は古川氏の病院長解職問題を明らかにするのが目的だった。大学役員会は古川氏が音声を外部に漏らしたなどとして、同25日付で解任。古川氏は2月1日、大学側にパワーハラスメントの調査を求めて記者会見を行った。
古川氏を含む教授らの有志団体が学長解任を求め署名活動を始めると、審査会議の議題は吉田学長の適格性の審査に変わり、形勢が逆転した。
吉田学長は大学経営の黒字化など手腕に定評がある一方、長期政権への批判もあり、「学内対立をきっかけに学長の後任争いが起きた」との見方がある。こうした中で起きたのが解任審査をめぐるトラブルだ。
■使えないコロナ病床
同大の医局から医師派遣を受ける各地の病院関係者が固唾をのんで注視する中、ことの発端となった新設の新型コロナ軽症者用病床について「あのコロナ病床は使えない」と学内外で噂されている。
そのコロナ病床は区画が施錠されたままで、一部職員しか内部を知らされていないという。昨年11月、吉田学長と古川氏が、コロナ感染者を受け入れるかどうかをめぐって対立。同月1日時点での受け入れ態勢について、「整っていなかった」とする大学側と、「完成していた」と主張する古川氏で見解が異なり、結局ほとんど使われないままになっているからだ。
使用を許可した市保健所は「床面積や廊下幅は検査基準に適合したが、(検査対象でない)感染防止策は病院が行う」として中立の立場をとっており、決着の見通しは立っていない。